SOUTH SWELL OKINAWAN 3rd WAVE
沖縄“やちむん”の新潮流

沖縄生まれの焼きもの、“やちむん”人気が再燃。

新世代の創り手3人が、東京の「ジャーナルスタンダード」に集結です。

edit&text_Yukihisa Takei / photo_Nobuyuki Shigetake

いま再び沖縄の“やちむん”が注目されています。“やちむん”とは沖縄の方言で焼き物のこと。約400年以上この地で独自に発展を遂げた焼き物は、過去に幾度も全国的人気を博したことがあるのですが、民芸ブームの再来などを受けて、ここに来て再び人気が上昇。中でも比較的若い世代の陶工の作品が新たなファンを獲得しています。

セレクットショップの「JOURNAL STANDARD(ジャーナルスタンダード)」は、この10年以上“やちむん”に着目し、ファッションやライフスタイルのひとつとして売り場で展開をしてきました。バイヤー自身も沖縄の陶工たちと交流を深め、昨年には現地でも人気陶工である「志陶房」の長浜太志さん、「工房十鶴」の柄溝康助さん、「室生窯」の谷口室生さんの3名の作品を集め、「オキナワン サードウェーブ」として紹介したところ、そのイベントは予想を超える人気となり、今年その第2回目が開催されることになりました。今回は会場で整理券を出さざるを得ないほどの人気だという“オキナワン サードウェーブ”。沖縄からジャーナルスタンダードの東京オフィスにやってきた3人の陶工にお話を聞きました。

生まれも育ちも違う、3人の新世代“やちむん”陶工

長浜さん、柄溝さん、谷口さんの3人は現在41、42歳というほぼ同世代ということもあり、地元でも親交はあるのですが、それぞれが独自に窯を持つインディペンデントな存在です。前回に続き「ジャーナルスタンダード」のバイヤーの“目利き”によって、東京に集まることになりました。

「去年やったときは、そんなに人が来てくれるのかなと思いましたね。普段の僕らは皆それぞれが自分の窯で黙々と造っているだけなので、世間の盛り上がりや、特に東京でどんな風に受け入れられているのか分からなかった」と3人は口を揃えます。

3人の陶工に共通するのは、これまでの“やちむん”の本場での修行を経たのち、それぞれが独立して作陶に新しい感性を持ち込んでいる点。これが“サードウェーブ”と呼ばれ、注目されている理由にもなっています。

3人の中で唯一、地元・沖縄の読谷村(よみたんそん)出身の「志陶房」の長浜太志さんは、21歳から“やちむん”の陶工として活動をしており、3人の中ではもっとも長いキャリアを誇ります。

「志陶房」の長浜太志さんは、3人の中では唯一の地元・沖縄の出身。

「一度は東京に出たんですが、離れて地元の良さを再認識して沖縄に戻ってきました。でも普通の勤め人になるのには抵抗があって、地元の読谷村で陶工になるのが格好いいんじゃないかと。当時は今みたいな注目のされ方はなく、地元でも知らない人が多いような地場産業という感じでした。今は(「工房十鶴」の柄溝)康助くんや、(「室生窯」の)ムロくんみたいに、沖縄以外の場所から来て陶工になっている人が増えていて、地元民としても負けられないと思いますし、いい刺激を受けるようになりましたね」(長浜さん)

長浜さんの作品は器の表情や、独自に開発した釉薬を使った色出しに特徴が。中でも独特のブルーは夏至南風(かーちべ)と名付けられるほどのオリジナリティです。

「工房十鶴」の柄溝康助さんは、大阪の出身。別の土地で修行したのちに26歳の時に沖縄の読谷村で弟子入りし、4年間の修行を積んで独立しました。柄溝さんの作る器はコーヒー豆やドクロなど、これまでの“やちむん”にはなかった絵付けに特徴があります。

「工房十鶴」の柄溝康助さんは大阪出身。沖縄・読谷村で修行を積んで独立。
コーヒーポットにはコーヒー豆、お皿にはユニークなドクロが描かれるなど、ポップな作風の柄溝康助さんの焼き物。

「ドクロのやつは、最初は青森に移住して日本蕎麦屋を始めた友人のために半分遊びで作ったものなんです。『任せる』と言われたので、その友人が好きそうな絵を入れて送りました。少し手元に残っていたので、それを沖縄の陶器市に出したら評判になりまして。親方からは『お前いい加減にしとけよ』と叱られましたけど(笑)」(柄溝さん)

 

“やちむん”にルールは存在しない?

前出の長浜さん、柄溝さんの作品を見比べても、作風に大きな違いがあることで分かるように、実は沖縄の“やちむん”には厳密なルールというのは存在しないそうです。

「絶対に沖縄の素材を使わなければならないとか、別にそういう規定もないんです。その辺は沖縄特有の“チャンプルー文化”という良い言葉がありまして(笑)。僕らは親方に習ってきたことだけをやっているわけではなくて、自分たちで新しい作り方を取り入れているんですが、それも含めての“やちむん”なんです」(「志陶房」長浜さん)

そんな3人の中でも、もっとも伝統的な沖縄の焼き物の作りに近いのが、「室生窯」の谷口室生さんの“やちむん”です。谷口さんは福岡県出身。福岡から焼き物を学びに沖縄にやってきて、そのまま沖縄に居を構えて作陶をするようになったそうです。

「室生窯」の谷口室生さんは福岡県の出身で、現在は読谷村とは少し離れた場所に窯を構えています。
色の使い方などは沖縄の伝統的な作品に近い谷口さんの焼き物。

「若い人が“やちむん”を求めるようになっていますが、それによって作り方が変わったというわけではなく、むしろ現代の用途に応じて作るものが変わってきたと思います。昔よりもコーヒーを飲む機会が増えたり、大きな皿よりも小ぶりなものの方が使う機会が増えたりしているので、それに合わせて陶工が作るものも変化してきている気がしています」(谷口さん)

ひとつユニークなポイントとして、沖縄とそれ以外の土地を比較すると、同じ器でも用途が異なるということです。特に作るサイズの大きさで顕著なものは、コップだと「志陶房」の長浜さんは言います。

「たとえばこのコップ(下の写真)は、こちら(東京)では焼酎を飲むとき用に買う方もいると思うのですが、これを見せると沖縄ではみんなに『小さい』と言われるんです。沖縄の人はみんな泡盛にたっぷり氷を入れて水割りでガブガブ飲むので(笑)。だから沖縄の人向けのものはもっとサイズが大きく作らなくては受け入れられなくて、それは東京ではビールグラスとして買う人がいるという(笑)」

このサイズのコップは、沖縄では“焼酎用”としては小さすぎるのだとか。

“やちむん”の現在と未来

3人の“サードウェーブ”だけでなく、沖縄の陶器市は現在、かつてないほどの盛り上がりとなっているそうです。そこには「ジャーナルスタンダード」のようなお店が長年“やちむん”を紹介してきたことや、近年のインスタグラムなどを中心にした、SNSの隆盛もその人気を後押ししていると3人は感じています。同時に作り手として読谷村に修行に来る人も増え、“やちむん”は今後の展開にも注目されています。

読谷村出身の長浜さんは、現在、そして今後の“やちむん”について、沖縄の踊り「エイサー」に例えてこうまとめてくれました。

「僕も昔からエイサーをやっているのですが、年配の人に聞くのと少し上の先輩に聞くのでは、腕の使い方とか踊り方もかなり違った形で教えられるんです。伝統的なものはあるけど、それぞれの世代でエイサーの踊り方も少しずつ違う。ベテラン、先輩、そして今の人、どれかの世代が正しいわけでもなくて、若い人からお年寄りまでがそれぞれの想いで踊るからパワーが出るんだと思うんです。“やちむん”も同じように、そういう沖縄独特のチャンプルー文化の中で、いろんな世代が創っていくものだと思っています」

「ジャーナルスタンダード」では、6月23日(土)、24日(日)に渋谷キャスト広場で今年の第1回目のイベントを開催。そして6月30日(土)、7月1日(日)には「ジャーナルスタンダード表参道」で第2回のイベントを開催するということなので、ぜひこの機会に足を運んでみてください。

お問い合わせ
INFO : JOURNAL STANDARD表参道
住所 : 東京都渋谷区神宮前6-7-1
TEL : 03-6418-7961
営業時間 : 11:00-20:00
http://journal-standard.jp

《編集後記》
沖縄の“やちむん”は自分が想像していた以上に大きな盛り上がりを見せているようです。その人気はある程度知っていたつもりですが、今回の「ジャーナルスタンダード」のイベントに朝から整理券を求めて来る人がいるほどとは思いもよらず。初めてお話をうかがった3人の陶工の皆さんは、実際にお話ししてみるとほどよい“ユルさ”がありつつ、その道に専念してきた人ならではの矜持が垣間見えました。ベテラン、若手がチャンプルーしながら、今後沖縄の“やちむん”がどう進化をしていくのかが楽しみです。(武井)