シリーズ「定番再考。」Vol.04
35周年でリニューアルしたPORTER タンカー シリーズ


edit&text_Yukihisa Takei / photo_Ko Tsuchiya/ cooperation YOSHIDA &CO.,LTD

誰もが知る定番を再検証。第4回は[PORTER(ポーター)]のTANKER(タンカー)。35周年を機にリニューアルした名品シリーズに隠されたプロダクトストーリーを紐解きます。

吉田カバンの[ポーター]と言えば、多くの人がこの「タンカー」と呼ばれるシリーズを思い浮かべるはず。ロングセラーとなっていることは周知の通り、1983年に発表され、2018年で35周年を迎えました。

タンカーはこれまでに数多くのモデルを輩出していますが、2019年SSのリニューアルで、ラインナップは50型に。その中には実は発表当時から35年間デザインを変えずに残っているものも多く、90年代、2000年代に登場したアイテムも継続的に生産されています。

あまりにも定番過ぎて、そもそもどのようにして「タンカー」は生まれ、どのように作られているのか、知っている人はそれほど多くありません。今回の「定番再考。」では、改めて「タンカー」の知られざる魅力に大フォーカス。1983年からのロングセラーや、90年代以降の中から『エバーメイド』が選んだ名品10点を紹介します。

また、滅多に取材ができない吉田カバン本社内工房の様子も特別に撮影許可が。いまだ完全ハンドメイドで作られている「タンカー」が生まれる現場も必見です。

※ 当企画では雰囲気を重視した撮影をしているため、実際の製品の色と異なる場合があります。

 

[80年代]MA-1をモチーフに誕生。しかし当初はあまり売れなかった?

こちらが「タンカー」シリーズに使われている生地。MA-1の生地をモチーフに、カバン用にオリジナルで製作されています。

日本にミリタリーをファッションに取り入れる文化が訪れたのは、トム・クルーズを一躍大スターにした1986年の映画『トップガン』からだと言われています。フライトジャケットやMA-1の存在を多くの日本人が知ったのもこの頃。アメカジが本格化する時期と相まって、街にはミリタリーファッションを纏った人が多く現れました。

ところが、“MA-1をモチーフにバッグに置き換えたミリタリーテイストのトラベルシリーズ”という[ポーター]の大胆な発想が「タンカー」シリーズとして形になったのは、それより3年前の1983年。今でこそ超の付く定番ではありますが、そもそもミリタリーファッションすら根付いていない時期に誕生したため、最初はそれなりの売れ行きだったそうです。ごく一部のモノにこだわる人々が熱狂的に支持していたので、企業の効率論は度外視で、小規模で販売が続けられていたのが実情でした。

ところが、「今もほとんど製法が変わっていない」という立ち上げ当初からのモデルを見返してみると、行き届いた機能的設計とともに、「なぜここまでやった?」と唸るほど複雑な縫製技術が駆使されていたことが分かります。

現在吉田カバンでは「タンカー」の生産を複数の工房・工場に分散し、それぞれ専門のカバン職人によるハンドメイドが続けられていますが、通常のカバン生産の技術とは全く異なる技術を要するため、一人前に縫製などができるようになるまでに数年の歳月が必要になるそう。「一針入魂」を信条とする吉田カバンの精神は、すでにこの頃から続いているのです。

今回はまず1983年の「タンカー」誕生以来、35年にわたって生産が続いているモデルの中から、『エバーメイド』が選んだ5つのモデルを紹介します。

《[ポーター]タンカー 1983年からのロングセラー定番5品》

[今回35周年でリニューアルされたポイント]
・「セージグリーン」を発売当初の色に再現アップデート
・ジッパーの引き手をオリジナルのプレス抜き仕様に
・内装部分の随所を現代の仕様にアップデート
・すべてのモデルにオリジナルの巾着が付属

① 48リッターの大容量。タンカー最大級の「2wayボストンバッグ(L)」

スーツケースの必要のない旅や出張に使いやすいのが、こちらの「2wayボストンバッグ(L)」。実物を持ってみるとかなりのサイズ感で、タウンユースの「タンカー」に見慣れていると、ちょっとしたインパクトがあります。この大きなサイズを綺麗に縫製するのは至難の技で、実は職人泣かせの一品だそうです。フルオープンになるので、旅の荷物も整理しやすい名品です。

機能的な間仕切りやベルトなどもついているので、旅にも使いやすい設計。

2WAY BOSTON BAG(L)
PRICE : ¥61,000+TAX
ITEM No.: 622-69318
SPEC : 1,455g / W670×H420×D170mm
SINCE : 1983年
https://www.yoshidakaban.com/product/104885.html

② ミリタリーを追求したアイコニックな「2wayヘルメットバッグ」

「ミリタリーテイストのトラベルシリーズ」をまさに地で追求したと言えるのが、こちらの「2wayヘルメットバッグ」。サイドにマチを作らない設計も、ヘルメットのような丸いものを入れる想定から。ミリタリーファッションすら定着していない時期にこの大胆な提案……。今回のリニューアルでは、ショルダーストラップの長さ調節ができるようになりました。

バッグ背面の中央にある生地の接合部。

2WAY HELMET BAG
PRICE : ¥26,500+TAX
ITEM No. : 622-68332
SPEC : 495g / W480×H520mm
SINCE : 1983年
https://www.yoshidakaban.com/product/104871.html

 

③ ヘルメットバッグから発想されたドキュメントバッグ「ブリーフケース(S)」

②の「2wayヘルメットバッグ」をベースに、ドキュメントバッグ的に開発されたのが、「ブリーフケース(S)」。マチのない仕様なので、コンパクトに書類などを運べるバッグとして愛用されてきましたが、近年ではPCバッグとして使用する人が増えているそう。年月を経て1983年当時はなかった使い途が出てきたことも手伝い、ロングセラーになっています。

前出の「ヘルメットバッグ」と同じ仕様の背面。

BRIEFCASE(S)
PRICE : ¥20,500+TAX
ITEM No.:622-68330
SPEC : 385g / W420×H300mm
SINCE : 1983年
https://www.yoshidakaban.com/product/104869.html

④ コンパクトで程よいサイズ感でロングセラーの「ショルダーバッグ(L)」

横幅28cmというコンパクトなサイズ感、そして内装の細かな収納のユーティリティが受けてロングセラーになっているのが「ショルダーバッグ(L)」。休日や旅先でふらっと街に出る時に、財布やケータイ、カメラなどを入れておくのにちょうど良い大きさです。現在でもベストセラーランキングで常にトップ3には入るそうです。

開くと機能的な小分けのポケット。日常使いのしやすさもポイントです。

SHOULDER BAG(L)
PRICE : ¥23,500+TAX
ITEM No : 622-68810
SPEC : 425g / W280×H200×D110mm
SINCE : 1983年
https://www.yoshidakaban.com/product/104876.html

⑤ サブバッグ的にも使える「リュックサック」はステッチワークにも注目。

左右で異なる形のフロントポケットを配した「リュックサック」は、80年代を想起させるようなミリタリーライクなデザイン。サイズ感は大きくないのに、14リットルという容量を誇っているので、その使い勝手の良さもロングセラーの理由です。フラップ部分の3本のステッチは3本針ではなく、1ラインずつの手作業。手間のかかる仕様なのに、そんなことを感じさせないカジュアルさも魅力。

主要な箇所に3本ステッチを施した屈強な作り。これは実は1本ごとに縫っているのに、非常に正確な幅で揃っているところに注目です。

RUCKSACK
PRICE : ¥27,000+TAX
ITEM No : 622-69388
SPEC : 450g / W300×H400×D120
SINCE : 1983年
https://www.yoshidakaban.com/product/104888.html

次のページでは、90年代以降の「タンカー」の名品に迫ります。