“原宿で最も辿り着きにくい店”
南貴之に聞く、グラフペーパーの現在

interview&text Yukihisa Takei / photo_Nobuyuki Shigetake

“原宿エリアで最も辿り着くことが難しいショップ”「グラフペーパー」が拡大リニューアル。その構想と、成長を続けるオリジナルブランドの現在について、アルファの南貴之さんに話を聞きました。

“原宿と表参道と渋谷の中間に位置するショップ”、と聞けばたいへんな好立地のお店を想像しますが、「Graphpaper(グラフペーパー)」は、そのどこからも遠いだけでなく、入り組んだ路地の奥にあるため、“原宿エリアでもっとも辿り着きにくいショップ”のひとつと言えるでしょう。この界隈を散策しているだけでは見つけることさえ困難なこのショップは、アルファの代表・南貴之さんが2015年にオープンしました。

そのロケーションにもかかわらず、現在では多くのリピーターや、ここを目指してくる人が絶えないのは、このお店でしか買えないもの、ここでしか出来ない空間体験があるから。このお店のオリジナルブランド[Graphpaper](※当記事ではショップ名を「グラフペーパー」、ブランド名を[Graphpaper]と表記します)も全国的に拡大を続ける中、さらにハイセンスでユニークなリニューアルを果たしたこのショップ、そしてオリジナルブランドの現在について、ディレクターの南貴之さんに話を聞きました。

定番が増え続けている、ブランドとしての[Graphpaper]

EVERMADE.(以下EM) : まずはブランドの[Grappaper]の方からお話を聞きたいのですが、シーズンを重ねるごとに、ラインナップが拡大していますよね。

南貴之(以下 南) : そんなこともないんですよ。 定番になったものが増えているだけで。シーズンコンセプトを設けたのはこの春からですけど、コレクションの半分は定番品ばかりです。定番の方は“開発していくもの”で、だいたい半年から1年かけてじっくりと「それが定番たり得るか」を何度も検証していきます。それによってだいたいシーズンに2〜3型が増える。もちろん残るものあれば、そうならないものもありますが、定番になっても必要に応じてアップデートしていきます。お客様からの声だったり、自分で実際に着てみて気になるところが出てくるので、それを修正したりしてさらに良くしようしています。

EM : 非常に『エバーメイド』的なプロダクトの作り方ですね。アップデートというのは、そこにトレンド感などをプラスしていくようなことですか?

: トレンドはほとんど意識しないです。あくまでプロダクトとしてのクオリティをどう上げて行くか。ただ、トレンドとは言えないかもしれないけど、僕の気分みたいなものは反映していると思います。

EM : ブランドとしての[Grappaper]がここまで拡大することは想定されていたんですか?

: いや、全然(笑)。お店のスタッフの制服として作ったようなものですから。最初は卸しもするつもりはなくて、このお店だけで売るつもりでした。ただ僕は凝り性だから、やり始めると中途半端なものが許せなくなるんですよ。それに色んなものを見ていたりもする仕事なので、気になっちゃう。あとはいいものを作って出来るだけ安く届けるには、ある程度の数も必要なんですよね。だから卸しに興味持っていただいたことは、良かったと思います。

EM : 卸し先はどうやって決めて行ったのですか?

: 僕も時々お店には立っているんで、そこで声かけていただいたお店は全部見に行きました。現在で50数軒になっていて、だからほとんど日本の都道府県は行ったことになります。

 

[Graphpaper]最新ルック画像より。

案内することすら困難な原宿の路地奥

「グラフペーパー」の入り口は、小さく店名と営業日が描いてあるだけ。

EM : 今回久しぶりに取材でこのお店にお邪魔しましたが、まあ本当に辿り着きにくい場所ですよね(笑)。来る途中も、こんなに入り組んだ場所だったけ? と思いました。ここでファッションや雑貨のお店をやるというのは、相当な覚悟だったと思うんですが、そこには何か「行ける!」みたいな閃きがあったんでしょうか。

: それも全然なくて。もともとここはプレスルームとして使っていたんですけど、このセットバックした感じが凄く好きだったので、いつかここでお店をやりたいなとは考えていました。でも「当たる」とか「売れる」は全く考えていなかった。しばらく放っておいたんですけど、そうもいかなくなって、という流れですよ。

EM : ちなみにお客様は、どんな感じでいらっしゃる方が多いですか?

: 最初の頃はね、キレて店に入ってくる人が多かった(笑)。

EM : 「分かりにくいよ!」と(笑)。

: そうそう。で、そういうお客様はお店に入ると、「しかも何もないじゃん」ってさらに不満そうなんですけど、扉を引くと商品が出てくるので(※「グラフペーパー」の店舗では、壁に埋め込まれた“隠しストレージ”を引っ張ると、その中に商品が陳列されている)、「こういうお店なんです」とご説明して、やっと笑顔になる。「そういうことか!」って。僕らからすれば「してやったり」なんですけど。だって最近ですよ、グーグルマップで場所が登録されたのも。それまでは近くに目印もないから、途中で電話いただいても、ご案内もできなかった(笑)。

壁のオブジェを引き出すと、商品が現れるという仕組み。

EM : 場所も分かり難いわ、ハイコンセプトだわ(笑)。

: だからと言って自信があったわけじゃないですよ。でも最近は来店も何度目かの方が多いので、お店に入るとご自分で壁から棚を引き出す方も多くなりました。リピートしていただいているんだな、と。こんな分かり難い場所に何度も来ていただけるなんて、ホント有難いなと思います。

僕は海外に服は探しに行っていないんです。” 次のページは南貴之のバイイングと空間作りについて