連載「MY DOUBLE STANDARD」[cantate(カンタータ)] デザイナー 松島紳編

使い続けているのにはワケがある。あの人の2つの定番アイテムにフォーカス。

edit&text_Marina Haga / photo_Erina Takahashi

ファッション関係者、アーティストなど、自らのスタイルを持つ人たちが、自分にとって欠かせない定番をファッションアイテムと雑貨から2つピックアップして紹介する新連載「MY DOUBLE STANDARD(マイ ダブル・スタンダード)」。第10回目は、[cantate(カンタータ)]のデザイナーであり、最近では[Zoff(ゾフ)]のアイウェアデザインを監修したことでも話題の、松島紳さんが登場です。
 

1.ファッション業界に入る原点的アイテム。[カンタータ]のデニム「1947type Jeans」 / 定番歴:2年

2017年秋冬コレクションでリリースされてから、ずっと継続しているブランドの定番モデル。

[Levi’s®︎(リーバイス®︎)]の「501®XX」をはじめとするヴィンテージに魅せられ、それを今の技術で再現したいということが、アパレル業界に足を踏み入れるきっかけになったという松島さん。学生時代から、ヴィンテージ特有の荒々しさや、効率を重視した縫い方などの仕様に惹かれる性分で、中でもデニムはその原点となるアイテムだったとのこと。自身のブランド[カンタータ]でデニムを手がけるということは、必然的な流れだったと言います。

「もともとワタリが掴めるくらい太くて、テーバードのないズドンとしたシルエットが好きでした。ピタッと穿くのはスラックスだけで、デニムやチノパンに関しては大きめに穿くほうがかっこいいと思っています。そんな好みもあり、[カンタータ]のデニムは実際に『501®XX』をカットして解析して、オリジナルから緯糸の色を変えたり、デニムの縫製に関しても手作業でしか出来ない仕様や縫い糸を複数使用するなどアレンジを加えて作り直しています」

「1年の3分の1はデニムを穿いている」という松島さんですが、昔から変わらない太いデニムを使ったスタイルも、時期により穿き方が変化しているとのこと。そこにはファッション界の裏話もありました。

「厳密に言うと、ファッション業界は肩幅とネックサイズ、袖丈のバランスと、毎年少しだけ変わり続けています。基本、501系の太いパンツをジャストサイズから2インチアップして穿くスタイルは変わらないのですが、この間までは短くロールアップしていたけれど、今は裾をクシュっとして穿くのが気分だったりします。決して流行りを意識しているわけではないですが、自分が先立って穿いていかないと、という意識はありますね。[カンタータ]の服はそういう時代の変化にも対応できるように、リブを長めに設定するなどディテールを通して着方をアレンジできるように作っています」

松島さんの基本スタイルである、デニムと[リオス・オブ・ メルセデス]を合わせたコーディネイト。

 

 

2.正装からカジュアルまでカバーする[Rios of Mercedes(リオス・オブ・ メルセデス)]のブーツ / 定番歴:10年

既存のカタログがなく、ハンドメイドで作られている[リオス・オブ・ メルセデス]は、レザーの種類、トゥーの形やステッチ、シャフト、パイピングの色など、各パーツの仕様をすべて自分で決めてオーダーできるとのこと。手前の真ん中が[カンタータ]の別注シューズ。[Hermès(エルメス)]と同じオーストリッチが採用されており、シャフトのグリーンは履いていくと、経年変化で色が黒っぽくなってくるそう。「履いていくとどうなるか、経年変化を考えながら、全体の配色をデザインしている」と松島さん。

松島さんのアトリエで一際存在感を放っているのが、[Rios of Mercedes(リオス・オブ・ メルセデス)]のウエスタンブーツ。[カンタータ]のLOOKBOOKでも欠かさず登場するこちらは、今から約10年前に浅草のブーツのリペア&カスタム専業店「福祿壽(ふくろくじゅ)」の店主に紹介されたことをきっかけにハマり、自身のブランドでは別注アイテムも製作しているほどだと言います。“足元は365日ほぼこのシューズ”というくらい愛用しているのはいくつかの理由があるようです。

「ウエスタンブーツって日本ではそんなに馴染みがないかもしれませんが、アメリカではドレスシューズより高級品で、スーツに合わせたりもするんですよ。高いものだと100万、200万するものもあって、それだけ値段がすることもあり、ドレスシューズと同等に扱われることが多いです。さらに言うと、もともとカウボーイの必要性から生まれたブーツなので、厳しい環境下でも耐えられるような頑丈さも特徴。スニーカーだとなんだか心もとないですが、“足を守る道具”というような安心感も備えています」

また、ブーツというと蒸れる印象がありますが、松島さんが1年中履いているというように、こちらのブーツは蒸れが一切ないのも他にはない違う魅力だと言います。

「このブーツは、靴によくあるグッドイヤー・ウェルテッド製法ではなく、リオス独自の製法です。どういうことかというと、グッドイヤーだと足の裏に敷くインソールとアウトソールの中にコルクを詰めてある構造なのですが、この靴は、『レザーインソール、シャンク、一枚の布切れ、アウトソール』という設計で、コルクが使われていない。コルクが湿気を吸ってしまうのが蒸れの原因だったんですよね。ソールがポリウレタンでできたスニーカーの場合だと、今度は劣化しやすくなる。と考えると、ソール交換ができるブーツだからこそ、長く履き続けることができるんですよね」

松島紳 / [カンタータ]デザイナー
文化服装学院卒業後、岡山のデニムをはじめとするさまざまな企業でデザイン、企画、生産を経験した後、2015年に[カンタータ]をスタート。メイドイン・ジャパンで作られたプロダクトは、感度の高い人々から支持を受けジワジワと広がりを見せている。「物を捨てるのが好き」という究極のミニマリスト。
http://www.cantate.jp