原宿の床屋「タケシズBARBER」オーナーが見た目ではなく仕上がり優先で揃えたバーバー道具とは。
edit&text_Marina Haga / photo_Erina Takahashi
ファッション関係者、アーティストなど、自らのスタイルを持つ人たちが、自分にとって欠かせない定番をファッションアイテムと雑貨から2つピックアップして紹介する連載「MY DOUBLE STANDARD(マイ ダブル・スタンダード)」。第27回目は、先日ジャパニーズオールドスタイルをベースにした昭和時代の“床屋”「タケシズBARBER」をオープンした曽原猛さんが登場です。
1.友人であるMr.PiguさんがディレクションしたショップオリジナルTシャツ
オールドアメリカンスタイルを打ち出した原宿の某バーバーのオーナーであり、徹底したクラシカルの追求でバーバーカルチャーを広めている曽原猛さん。東京でも、いわゆる西海岸系や東海岸系のスタイルを踏襲するバーバーが増えてきている中で、日本が誇る“床屋文化”をベースにしたバーバーをオープンしました。そんなアメリカと日本の昭和時代の床屋という双方から文化を見つめる曽原さんが自身の定番に選んだのが、古くから親交のあるMr.Piguさんが考案したショップオリジナルTシャツ。
「Tシャツだけでなくこの店全体のプロデュースをMr.Piguさんにお願いしていたのですが、『日本の床屋さんをやりたい』と言われて正直、『大丈夫かな』って不安だったんです(笑)。日本のバーバー界にとっては昭和の床屋って一種の“失われた時代”というイメージがあったので」
アメリカンスタイルのバーバーと異なり、美容師ブームが起こり床屋に通うお客さんが減ってしまった現代においてこのコンセプトは少々リスキーだったと言う曽原さん。一方で、実家で床屋を営んでいる両親のことを思い出し、ピンときたことがあったそうです。
「この店ではストーリーや想いがあるコトをやりたいと思っていたのですが、“昭和の床屋”と言われて、実家を思い出しました。親と同業であるにも関わらず、これまで一緒に仕事をしたことがなかったんです。そういう意味も込めて、実家にある什器などを店内に飾り、コラボレイトのようなことをしたのがこのお店。そういう背景の中、作ったこのTシャツは、ある意味、原点であり思い入れも強いです」
2.すべては仕上がり優先で選んだ曽原さんが理容室ワークで使っている3種の神器
料理人が包丁にこだわるのと同じように、自分の使いやすいツールを模索してきたという曽原さんですが施術において欠かせないのが、[タフコーム]のコーム、[阪本高生堂]の「クールグリース」、[コードレス]のクリッパーの3つ。といえどもこれらはあくまで “今現在”の定番とのことで、日々、技術を高めていくためには道具をアップデイトしていくことは否めないとのことでした。
「クリッパーなどの電子機器は日進月歩なアイテムなので、意固地にひとつの道具にこだわり続けるのではなく、新しいものにも目を向けておくのが重要だったりしますね。一方で、昔から基本の形が変わらないコームは、ずっと同じ物を使い続けていたりします。昔は見た目が良くて水牛を使っていたのですが、仕上がり優先で道具を選ぶとこれは堅くて折れないし、ちょっとした分け目も緻密に作ることが出来るんです」
また、曽原さんが理髪店をはじめてから長い付き合いだというのが、世界一強い水性ポマードを作ったメーカー[阪本高生堂]の「クールグリース」。さまざまな商品が溢れ飽和状態であるヘアケア市場の中でも、同アイテムは世界一のクオリティーかつダントツで人気が高いと言います。
「サラサラすぎず、堅すぎないテクスチャーが丁度良いんです。水性で洗い落ちも良いのにキープ力もある。近々、パッケージに店のグラフィックを入れたコラボアイテムも発売予定です」
曽原猛 / タケシズBARBER オーナー 従来の理容室とは違う新しいタイプのバーバーとして原宿で某バーバーを経営。今年3月に、Mr.Piguさんディレクションのもと日本の昭和理髪店をベースにした新店舗「タケシズBARBER」をオープン。硬派な理髪店にストリートカルチャーやアートを取り入れることで、革新的なスポットが誕生した。