“蒐集癖”と探究心から形成された「……Research」小林節正さんのスタンダードとは
photo_Erina Takahashi / edit&text_Marina Haga
ファッション関係者、アーティストなど、自らのスタイルを持つ人たちが、自分にとって欠かせない定番をファッションアイテムと雑貨から2つピックアップして紹介する連載「MY DOUBLE STANDARD(マイ ダブル・スタンダード)」。第32回目は、「……Research」を主催する小林節正さんが登場です。
1.「クリケットキャップをかぶれるものにしたい」という熱意から生まれた[ジェネラルリサーチ]のキャップ / 定番暦:約20年
さまざまな分野の古着やプロダクトを蒐集し、徹底した研究によって生み出されている小林さんの手掛ける[MOUNTAIN RESEARCH(マウンテン リサーチ)]のプロダクト。“衝動買い”からくる収集癖とマニアックな物作りに定評のある小林さんですが、自身の定番としてピックアップしたのはクリケット帽風のキャップでした。
「クリケットキャップの配色が好きだったんですが、クラウンが浅くてツバが短いので、自分がかぶるとどうしても漫画の『怪物くん』みたいになっちゃうんですよ(笑)。それだとさすがにかぶれないので、野球帽の形になおして1998年に[ジェネラルリサーチ]で作ったのがこちらのキャップです」
パッと見て気付く方もいるように、野球帽と言ってもいわゆるメジャーリーグキャップとはシルエットが異なるのが特徴。これは1939年ぐらいの時期のアメリカの野球帽の製法であり、小林さんにとって野球帽と言えば、この“かぼちゃ”型シルエットが基本だったとのことでした。
「スヌーピーでおなじみの『ピーナッツ』に出てくるチャーリーブラウンがかぶっているキャップもそうなんですが、これは当時ならではのもので、“かぼちゃ”と言うクラウンが凸凹とした状態を再現したものなんです。1990年代の前半にNYのセレクトショップでこの形のキャップに出会って以来、自分の定番のシルエットになりました。そんな昔のアメリカの野球帽をイギリスのクリケットキャップと融合させちゃうってのは、両国のカルチャーを端から見ていられる自分のような日本人がやるには丁度良いなと思いました」
2.20代の頃から自然と手が伸びてしまう四角いサングラス / 定番歴:約30年
小林さんが20代の頃から蒐集しており、今でも見つけると思わず食指が動いてしまうというのが、四角いフォルムのサングラス。この形は、‘40sや’60sのフランスメイドが多くアンティークで壊れやすいため、複数本を並列で大切に使ってきたと言います。
「当時は古着屋さんに行った時に、レジ前に四角いサングラスがあると無条件で買っていました。ここ7、8年は『ebay』などネットで買うことが多くなり、正直顔のフィット感は分からないんですけど、ただ“四角い”というだけでたまらず買ってしまうんです(笑)」
70年代中期に生まれたパンクカルチャー時代に、パンクスたちがフランス人を気取ってこの四角いサングラスをかけていたことから、親しみを感じるようになったというこのフォルム。一般的に、顔の印象を強く左右させる眼鏡はショップに足を運んで買う人が大多数な中で、小林さんはフィット感はさほど気にならないとのことでした。
「サングラスなので日中ずっとかけているものなのですが、フィット感はそんなに気にしたことはないですね。ある意味、アクセサリーみたいなものだし。自分に合うか合わないかはもちろん大事なことですが、顔にフィットさせるための再調整をするのがただ単に面倒くさいってことになるのかな(笑)」
小林節正 / .....RESEARCH代表 製品の入念なリサーチや山暮らしを実践するなど、独自の手法でプロダクトを製作。山暮らしのための服[Mountain Research]や、キャンピングファニチャー[Holidays in the Mountain]、歩くためのギアコレクション[Anarcho Pax]などを展開している。[GENERAL RESEARCH]はそれらの前身となる2006年に終了させたプロジェクト。 https://www.sett.co.jp/ http://www.anarchomountaineers.org