-アーティスト BIEN編- 連載「MY DOUBLE STANDARD」
edit&text_Marina Haga / photo_Erina Takahashi
ファッション関係者、アーティストなど、自らのスタイルを持つ人たちが、自分にとって欠かせない定番をファッションアイテムと雑貨から2つピックアップして紹介する連載「MY DOUBLE STANDARD(マイ ダブル・スタンダード)」。第17回目は曲線のドローイングを表現の主軸とし、東京・外苑前にある「ワタリウム美術館」の「理由なき反抗展」で新人ながら存在感を見せつけた気鋭アーティスト、 BIENさんが登場です。
1、日常と作業の垣根なしにずっと着続けている[コロンビア]の「WHIRLIBIRD PARKA JACKET」 / 定番歴:5年
「ワタリウム美術館」の「理由なき反抗展」や寺田倉庫のアートプロジェクト「鉄工島フェス」など、カルチャースポットの常連であり、巧みな手法を使ったストリートな作品群で異彩を放っているアーティスト、BIENさん。その名前を知らなくとも、彼の象徴とも言える曲線で構成されたアートに触れたことがある人はいるのではないでしょうか。
そんなBIENさんが自身の定番ウエアとして選んだのは、NYの古着屋で購入した [Colonbia(コロンビア)]の「WHIRLIBIRD PARKA JACKET」。ただ線をドローイングするだけでなく、廃材をキャンバスにしてラインを掘るアートを手掛けるなどの大掛かりな作業も多いことから、デイリーウエアと作業着の境目が自ずと無くなってきているとのことでした。
「同じ古着をネットで探してもう一枚購入したぐらいこの形が気に入っています。僕の場合、1日の大半を作業に費やしているので、おしゃれというより全部作業着になってしまうのですが、このジャケットは余計なディテールが削ぎ落とされていてポケットも多く、カラーリングも好きなんです。ダウンのライナーが取り外せるのでオールシーズン着ています」
本人曰く「着すぎてボロボロ」なジャケットの胸元には、アイコニックなピンバッチがちりばめられており、レトロマウンテンなジャケットが“BIEN”仕様にアレンジされていました。
「ジャケットの前面は一番好きなカートゥーン『ロジャーラビット』のピンバッチをはじめ、『ピンキー&ブレイン』やアーティストの友達のグッズなどをフィギアを集める感覚で蒐集しては、ランダムに付けています」
2.作風の原点であるカートゥーンのフィギア / 定番歴:約20年
先述のピンバッチの話からも伺えますが、BIENさんの作品のバックボーンにあるのはキャラクター文化であり、子供のときから集めているというのがカートゥーンたちのフィギア。曲線やうねりのラインによって構成された抽象的なクリエーションは、よく見ると彼らの輪郭や動作の線から作り出されたもので、すべて記号的意味を持つ集合体だと言います。
「ゆるゆるでシルエットが分からないものや未完成な感じに惹かれて、昔からハッピーセットやペットボトルの飲料水に付いてくるチープなおまけを集めていました。フィギアって、例えば3体の違う人物がくっついて一体として独立していたり、自然ではありえないおかしなことをやっている造形物だなと思ってて。僕のドローイングもキャラクターのフィギアを重ねたときに見えるアウトラインをモチーフにするなど、何でもありなフィギアの世界からインスピレーションをもらっています」
またフィギア同様にヒントとなっているのがアニメーションで、それらフィクションの世界を知ると彼のアートの読み解き方が見えてきます。
「アニメの場面を静止して切り取るのではなく、動いているものを瞬間的に切り取った時に見えるいびつなアウトラインが好きです。マンガの世界も同じで、キャラクターが走った時にできるラインや、汗をかいた時に出る水滴などの動きの補佐的な線を手がかりにドローイングに活かすこともあります」
BIEN / アーティスト アニメーションやフィギアなどのカートゥーンカルチャーを原点にさまざまな形でドローイングを表現する気鋭アーティスト。最近では複数人のアーティストで行う「ハンディスキャナー」を使ったアートプロジェクト「SCAN THE WORLD」を発案し、エキシビションを行うなど、絵画の枠を超えさまざまな表現方法を取りながら自らのクリエーションを生み出している。 https://www.instagram.com/bien_jap/