元ネタは何!? ミリタリーの名作からサンプリングした、ファッションブランドのミリタリーウエア6選
“パロディ”や“オマージュ”、“リバイバル”など、ファッションは過去の再構築の上に成り立っていることは周知の通り。旬のファッションブランドに目を向けてみると、ミリタリーウェアの名作から着想を得たアイテムが豊作なことはお気付きでしょうか。
元ネタに対して偉大なリスペクトを抱きつつも、現代に合った絶妙なアレンジによって、快適さとファッション性が考え抜かれた魅力的な服。
今回はタウンユースに取り入れたいファッションブランドのミリタリーウェアを、元ネタと一緒に紹介。
■ファティーグシャツ
着込むほど味が増すオックスフォード仕立て
SH(エスエイチ)
70年代のスキーブランドのスポーツシャツなど、ユニークな元ネタからシャツを作るのが得意なシャツブランド[SH(エスエイチ)]より、ホワイトカラーのファティーグシャツを。ボディにはオックスフォード生地を用いることで従来よりも着心地が軽やか。大きく分けて、前期、中期、後期と時期によってデザインが異なるファティーグシャツですが、こちらは1番シンプルなデザインの後期型のディティールを忠実に再現したもの。洗いざらしで着ることで、印象的なパッカリングと素材の経年変化を楽しめます。
ベトナム戦争の際、アメリカ軍の亜熱帯用被服として登場したウェア。軍モノの中でも、Tシャツの上に羽織れるという着やすさから、ここ数年多くのブランドからモディファイされリリースされることが多い印象。比較的リーズナブルに入手することができるのも◎。象徴的な4つのポケットは物が取り出しやすいように斜めに設置されており機能的。
■ヘルメットバッグ
多機能にもシンプルにもアレンジして使える!
Hender Scheme(エンダースキーマ)
アイコニックなフロントの2ポケットをオープンファスナーにしてポケットを着脱してミニマムにも使えるようにした、現代的な提案が光る[エンダースキーマ]のヘルメットバッグ。アウトドアの王道60/40クロスをメインに、同ブランドらしくウレタンメッシュやカウレザー、ベロアなどの素材をマルチに切り替えており、おなじみのヘルメットバッグも新鮮な面持ちに。内側のライニングはレスキューオレンジでなくシックなグリーンなので、ビジネスなど落ち着いた印象で持つことができます。
その名の通り、朝鮮戦争の際に米軍のヘルメットや酸素マスクを持ち運ぶために生まれたバッグ。誕生は1950年代であるが改良が繰り返され、現在あらゆるブランドで見るフロント2ポケットが搭載されたモデルは1970年代に登場した3rdモデル。その出自を思わせるタフで大容量な作りでも、マチがないのでスッキリ持つことができます。
■モッズパーカ
現代のファブリックで着込まなくても風合いを演出
SCYE BASICS(サイ ベーシックス)
「モッズパーカ」の代表、米軍が採用した野戦用パーカー「M-51フィールドパーカ」をモチーフに、高密度タフタというポリエステルとナイロンを掛け合わせた現代のファブリックで仕立てた1枚。ムラを残した奥行きのある色味や、縫製部分の強いシワと歪みが再現されているので、“風合いが馴染むまで我慢”的な発想も無用。本来は、フィールドジャケットの上に羽織る防寒着であるアイテムですが、こちらは裏地が付いていないため3シーズン着用できるのも嬉しいポイント。
ボリュームシルエットにロング丈、肩の落ちたデザインという現代のトレンドにもマッチすることもあり、ここ数年は今まで以上に街でよく見かけるようになった防寒着「M-51」。モッズコートの特徴的な作りのひとつが、後ろの裾が燕尾(えんび)状に先割れしており、裾周りに縫い込まれたドローコード(絞り紐)にて下腿に巻きつけられる「フィッシュテール」のディテールで、こちらもデザインアクセントとして効いています。
■フレンチアーミー M-47型トラウザー
シャイニーな玉虫色で無骨な印象を刷新
blurhms(ブラームス)
ヴィンテージミリタリーの中でも有数の太さを持つ「M-47 トラウザーズ」ですが、太すぎたりレングスが長すぎたりでジャストサイズを見つけるのは至難の技。従来のボリューム感は活かしつつ、ウエスト周りや裾を少し調整することでスッキリと仕上げたこちらは、そういう心配をカバーしてくれるのも加点対象。コシある生地感と光沢のある玉虫色の発色で、ジャケットとも相性がよく、クリーンなイメージで穿くことができます。
当時のミリタリーウェアの中で、ダントツでクオリティが高かったと言われている「フレンチアーミー M-47型 トラウザーズ」。その作り込みに惚れ込んだマルタン・マルジェラがショーでM-47パンツを裏返して穿かせたことは有名な話。[Maison Margiela(メゾン・マルジェラ)]はもちろん、[POLO RALPH LAUREN(ポロ・ラルフローレン)]など、名だたるブランドがこのパンツから着想を得たアイテムをリリースしています。
■モーターサイクルコート
当時最強のハイスペックコートを現代仕様に
HEUGN(ユーゲン)
1920年〜40年にかけて着られていた「モーターサイクルコート」ですが、ゴム引き素材で仕立てられた当時のヴィンテージはまるでテントを着込んでいるように重く、日常で着るのは現実的ではないもの。こちらも「M-47 トラウザーズ」と同様に、[Maison Margiela(メゾン・マルジェラ)]や[GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)]などのサンプリングネタにされてきましたが、[HEUGN(ユーゲン)]がウール素材で手がけたコートは、デザインの再現性だけでなく着心地も申し分なし。伝統的な貫禄&重厚感はそのままに、日本の美、本物のモノ作りを追求するブランドの解釈のもと、柔らかく軽い着心地にアップデートされています。
フランス軍のバイク部隊のコートとして作られたもので、ミリタリーのヴィンテージコートの中でも指折りの数に入る傑作で、資料的な役割を果たすことも。一方で、約80年前に作られたものなのでダメージが強い個体が多く、かなり貴重。大胆にAラインに広がる様子がエレガントで大人の渋みを演出。ボタンの造形や金具、マップポケットや糸でかがったベンチレーションなど、バイク乗りに特化したディテールを見るだけでも面白く感じます。
■CPOシャツ
シルエットをボックス型にアレンジ
YAECA LIKE WEAR(ヤエカ ライク ウェア)
アウターとシャツの中間的な存在のミリタリーの定番、CPOシャツ。最も特徴と言えるフロントのフラップポケットなど、現行のディテールを忠実に再現しながら、身幅やアームにゆとりを持たせたボックスシルエットが今っぽい。滑らかなウールリネンメルトン生地を採用しているので、チクチク感がなく柔らかな着心地。ミリタリー出自でもゴツさがなく上品に着ることができます。
アメリカ海軍の下士官チーフ・ペティ・オフィサー(CPO)に支給されていたウールシャツは、ブラックにも近い深いネイビーブルーが特徴。50~60年代のCPOシャツは両ポケのヘビーウールで仕立てられており、ウエスタンヨークの様な曲線で作られたフラップポケットがポイント。1940年代の第二次世界大戦中に使用されていた、通称”片ポケ”と呼ばれる胸ポケットが片方しか付属していないCPOウールシャツも人気が高いです。比較的大きなサイズが出回っていることが多いので、アウターとして今の雰囲気にマッチした着こなしが叶います。
edit&text_Marina Haga / styling_Yuto Inagaki / photo_Kengo Shimizu / hair& make-up_Kentaro Katsu / model_DOM(West Management)