“STORAGE GARMENTS”
収納の多い洋服たち
ファッションに収納の多い服が増えてきた? ハイテクからフィールドコートまで、“携行品が収納できる”目線で選んだ、ミニマリストのための10着。
edit_Yukihisa Takei / text_Marina Haga / styling_Akiyoshi Morita / photo_Kengo Shimizu
ウェラブルガジェットや、メゾンが提案しはじめた“ミニ財布”が象徴するように、ライフスタイルのミニマル志向が進むにつれて浸透してきた「荷物を極力少なくする」というスタイル。そんなムードは昨今のファッションシーンにも及び、用途に応じて生まれたミリタリーウエアやフィールドコートの系譜に倣うように、現在のニーズにアップデイトされたファンクションビューティーなファッションアイテムが豊富にリリースされています。
ここでは、スペックはもちろん、ディテールワーク、そして何よりファッションとしてのデザインが秀逸な“収納の多い洋服”10着を厳選してセレクト。パッキングをスムーズにし、手荷物をスマートに装着できる日常の即戦力となるウエアは、“ストリートの手ぶら派”必見です。
01.ENGINEERED GARMENTS × BARBOUR(エンジニアド ガーメンツ × バブアー)の「ZIP PARKA」
収納:フラップポケット5つ(フロント)、ゲームポケット、フラップポケット2つ(バック)
アーカイブの定番をソリッドにアップデイト
今季、注目が高まる[バブアー]とのコラボレーションから、ラギットな一枚を。[エンジニアド ガーメンツ]のアーカイブである「FIELD PARKA(フィールド パーカ)」をオイルドコットンでアレンジしたもので、 ストームガードが付いた比翼仕立てのフロントジップや多機能ポケットなど、ミリタリーのディテールを追求。鈍い光沢を放つ特有のワックスドファブリックが、無骨な印象を後押ししています。
02.COMME des GARÇONS JUNYA WATANABE MAN (コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン)のマウンテンジャケット
収納:ポケット4つ、ストラップ(フロント)、ポケット3つ(バック)
手ぶら派必見。バックパックとジャケットが一体化!?
[コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン]が得意とする再構築の発想によって、イギリスアウトドアブランド[karrimor(カリマー)]の中型バックパック「SL 35 TYPE 1」を解体し、マウンテンパーカへとトランスフォーム。大量の荷物を装備できる一着は、ともするとオリジナルよりもパフォーマンス性が向上し、旅路においてパッキングの概念を変えてくれるかもしれません。
03.TEÄTORA(テアトラ)の「デバイスジャケット」&「ウォレットパンツ」
収納:【ジャケット】ポケット4つ(ウォレットポケット、エアーチケットポケット、ダブレットポケット、パスポートポケット)、【パンツ】2つ(セキュリティーカーゴポケット)
ビジネストリップを快活にする“Pシリーズ”
“旅の荷造り”をテーマに掲げている[テアトラ]の定番、パッカブルシリーズ。ビジネス使いでもOKな品の良い仕立てでありながら、その佇まいからは想像のできない機転の効いたポケットの構造がお見事。ZIP式で深めに設定されたポケットは貴重品管理にも適しており、その便利さは各地を飛び回るジェットセッターにもお墨付きです。
04.alk phenix(アルクフェニックス)の「zak anorak」
収納の数:zak pocket(中は小分け収納4つ)、カンガルーポケット
高スペックなトップスで街を手ぶらで歩く
サコッシュブームの火付け役であった“ポケットの延長で持てるバッグ” の元ネタであったのが、フロントに大きなフラップポケットを配したこちらの「zakシリーズ」。中でも、ドライタッチな極薄軽量素材で軽やかな着心地を実現したアノラックは、街使いを基軸にアウトドアまで繰り出せる頼もしい一品。不要なディテールを極限まで削ぎ落としたデザインは、街着の主役としても軍配が上がります。
05.White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)の「ラゲージマウンテンーパーカ」
収納:フラップポケット4つ、ジップポケット2つ(フロント)、ゲームポケット、フラップポケット2つ(バック)
男らしさを凝縮させたハンティングジャケット風な一枚
パッチワーク調の生地使いや、前面から背面に渡ってデコラティブに設置されたポケットなど、フィールドでの存在感が抜群なジャケット。フロントに6つポケットを配したオーセンティックなハンティングジャケットのスタイルを踏襲しつつ、レイヤードしやすいオーバーシルエットでファッション性も備えています。外遊びがライフスタイルの一部である人にこそすすめたいアーバンウエアです。
06.MOUNTAIN RESEARCH(マウンテン リサーチ)の「フラワーキャリージャケット」
収納:前身頃から後ろにかけてのゲームポケット
スマートに物を身に着ける、ウエアラブルバッグ的ジャケット
収納の多い“ギアな服”を得意とする[マウンテン リサーチ]の手にかかれば、おなじみのワークウェアもユーティリティー度が刷新されます。バッグのようにザクザク物入れができるポケットディテールは、タウンユースにもフィットし、沢山のものを持ち歩く際に便利。フラワーキャリーポケットと名づけられた特徴的なディティールはまさに”ラゲッジウェア”と呼ぶに相応しい出来映え。
07.Norwegian Rain(ノルウェージャン・レイン)の「M85 HYBRID COAT」
収納:フラップポケット4つ、ZIPポケット2つ(フロント)、フラップポケット1つ(バッグ)、フラップポケット2つ、ZIPポケット2つ(インナー)
見た目はシンプル、中身は本格アウトドア
スマートなルックスとは裏腹に、総計11つのポケット収納を備えたドレスとカジュアルの中間で着られるスタリッシュなモデル。防風や透湿に対応した機能性や、雨風を防ぐ首まで覆うデザインなど、悪天候の日はバッグを持たずにこれ一枚で出かけられる応用力を備えています。アーバンアウトドアを極限まで追求した頼もしい一枚です。
08.MISTERGENTLEMAN(ミスター・ジェントルマン)のフィッシングコート
収納:ウェルトポケット2つ(アウターコート)、フラップポケット3つ、ジップポケット2つ(インナーベスト)
紳士的なコートにハイブリットされたアウトドアなギミック
先シーズンより街中で頻繁に見かけるようになったフィッシングベスト。そんなアウトドア然とした本格アイテムをトライするには少々抵抗があるという人も、インナーにひっそり携えている程度なら取り入れやすいのでは? 肌触りの良い上質なウールコートの左身頃にフィッシングベストが付属されたこちらは、スマートさと道具的機能を両立した斬新なデザインが特徴。ノーカラーコートに見える一枚なら、シーンを選ばす都会的に着られるはず。
09.EDWINA HOERAL(エドウィナ・ホール)のハンティングジャケット
収納:片玉縁ポケット2つ、折りたたみマチポケット、接ぎマチポケット、ダーツマチポケット、ボックスプリーツポケット、パッチポケット(フロント)
モダンなカントリースタイルにブラッシュアップ
古い年代のハンティングジャケットに多いディテールである、異なるサイジングのポケットが配された[エドウィナ・ホール]のクラシカルな一枚。もともとカントリーサイドで着ることを目的にしたジャケットをオリジナルのパターンと素材や袖のパッチを排除することで、都会的にモディファイ。インナーはシャツではなく、あえてハイゲージニットを合わせて、カジュアルなスタイルに落とし込むのもあり。
10.MOUT RECON TAILOR (マウト リーコン テーラー)のシューティングジャケット
収納:ジップポケット2つ(フロント)、ポケット14つ(インナー)
都市型ミルスペックを実現した、アウターの本命候補
現行のミルスペックを引用し、次世代の高機能ウェアとして注目されている[マウト リーコン テーラー]の薄く・軽く・暖かいなどのテクノロジーを高水準で達成したジャケット。一見すると普通の体裁ですが、フロントの両サイドのジップを開くと、付属品を装備できるアタッチメントが登場し、本来の実力を発揮。 あくまでも“機能を隠す”という、オーバースペックであることを主張しない姿勢が好印象です。
《編集後記》
遊びに行くときは基本手ぶら派なので、自分自身の洋服を買うときの基準の一つに“ポケットがある”ということがありました。出来ればそのポケットは、小銭を入れても落ちない深さのあるものが理想。しかし、メンズウエアには当たり前のように存在するポケットも、レディースものとなると意外と付いてないことがしばしば。かつてクリスチャン・ディオールが“男性のポケットは物を入れるために存在し、女性のそれは装飾”だと言い放ったように、男性と女性の洋服には実用と美という相反する用途があるという背景は未だに拭きれないのかもしれません。遊びの際はアウターを脱いでしまうことが多いので、今度は収納に優れたトップスが気になるところです。(羽賀)