ミルキーからワンカップまで?
懐かしいあのフレーバーが線香に
目と鼻で楽しむ。老舗ローソクメーカー「カメヤマローソク」の隠れ定番「故人の好物シリーズ」に注目
edit&text_Marina Haga / photo_Kiyono Hattori
「第69回NHK紅白歌合戦」でシンガー・ソングライター、米津玄師さんのパフォーマンスを約5000本のローソクを使って彩ったことがトレンドニュースにランクインするなど、何かと話題のローソクメーカー「カメヤマローソク」。 以前、当サイトでも紹介したように、老舗の風格を感じるクラシックなアイテムを多く揃えている中で、ポップで意外性のあるプロダクトがリリースされていたりします。それがなんと年間約47万個(!)を売り上げているというメーカーの隠れ定番「故人の好物シリーズ」。 今回は、柔軟な発想と格式高い技術力の融合によって生まれたどこか懐かしい香り「ミニ寸線香シリーズ」にフォーカスし、その魅力を探ってみました。
「故人の好物シリーズ」の誕生の秘密
生活の形態が変化し、故人を偲ぶという文化が薄れつつある現代において、その想いを繋ぐアイテムとして誕生した[カメヤマローソク]の「故人の好物シリーズ」。このユニークなアイディアが多くの人の目にとまり、2015年には「グッドデザイン賞」を受賞するなど、昨今は供養の用途に留まらず、日本のアロマとしてや外国へのお土産としても需要が高まっています。
「ミルキー」や「ハッカ油」など、“昔懐かしい”をコンセプトに次々とアイテム化してきた同シリーズですが、その前身となるのは今回紹介する線香ではなく、同社の「好物キャンドル」がはじまり。それが好評だったことから、2010年に線香シリーズのリリースをスタート。そのラインナップは月日とともに増え、現在は全11種にまで成長しています。
香りをかいでみるとその再現性の高さに驚かされますが、そこには一つの開発には何ヶ月もかけ、味覚と臭覚から感じる食べ物を、臭覚の要素だけで再現するのに調香を繰り返したという同社の開発努力がありました。高度な技術力と研究により実現した、日本国民なら誰もが馴染み深い懐かしの香りをカテゴリーごとに全種類ピックアップ。
あの頃にタイムスリップ。昭和レトロなキャンディシリーズ
1、芳醇な香り漂うベストセラーの妙味
北海道土産の定番「夕張メロンキャラメル」とのコラボ。ご存知、北海道の最高級果物「夕張メロン」と言えば赤肉メロンの味が特徴ですが、線香においても本物のメロンから作ったメロンパウダー入り。メロンのコクと強い甘さが忠実に再現されています。
2、しっかり牛乳が香る愛情深い“ママの味”
水飴と北海道のミルクから作られた練乳を主原料として1951年に誕生した「不二家」のロングセラーを線香でシミュレート。幼少期の記憶を思い起こさせる、優しい香りが空間に広がります。
3、ひとつぶの幸せを1本のフレーバーに凝縮
甘酸っぱい表面の中にサクサクのミルクミルフィーユをサンドした、いちごキャンディの定番[サクマ]の「いちごみるく」。オリジナルはいちごの酸味と甘みのハーモニーが好評でしたが、こちらもキャンディ同様、ふわっとやさしい甘さが漂います。
4、何が出てくるか分からないワクワク感を体験
缶を振ると鳴るカラカラという音や、毎回何が出るか分からないワクワク感など、幼心を刺激してくれた「サクマドロップス」を4種のフルーツ線香でプレイバック。香りには、人気の味であるいちご、りんご、オレンジ、メロンがセレクトされています。
5、柑橘特有の爽やかさと渋みをレイヤード
駄菓子屋の定番であった「ボンタンアメ」。クラシカルなパッケージを開封するとオブラートに包まれているのが特徴のお菓子で、餅の柔らかい食感にボンタンの爽やかさが絶妙にマッチします。柑橘の爽やかさは線香にしても人気が高く、万人に人気とのこと。
自販機で見つけると思わずポチってしまう? 馴染み深い飲料シリーズ
6、カップ酒のパイオニア「大関」をリアルに配合
カップ酒の始祖であり、今も頂点に君臨する青ラベル「大関」。本物の日本酒を採用することで、飽きのこないバランスの良い味わいが見事に香りで再現されており、灯をともすとほのかな日本酒の香りが立ち込めます。お酒が好きだったあの人も喜ぶはず。
7.濃厚な桃の香りをワガママに味わう
桃をまるごと裏ごしした果実本来の濃厚な味わいなゆえ、子供の頃は少し高級なものを飲む感覚だった「不二家ネクター」。ジューシーでとろける桃が喉に充満したように、ドリンク好きの期待を裏切らない芳醇な香りを実現しています。
8、「ハッカ油」のクールな使い方を提案?
リフレッシュしたい時や涼感、虫除けなどとしても昨今注目が集まる「北見ハッカ通商」の「ハッカ油」。北海道土産の定番品としても有名ですが、実際にミントから抽出されたハッカの清々しく爽やかな香りは、部屋のリフレッシュや寝苦しい夜にも最適です。
本場も顔負け。「カメヤマ」が独自開発したオリジナルシリーズ
9、香辛料の風味がガツンと広がる「カメヤマ」スパイス
あのレトルトカレーを彷彿させるレトロなパッケージが目を引くこちらは、原料にクローブ、シナモン、セージなどのスパイスを投入した本格派。焚いた匂いにはほんのり白檀も感じられ、カレーのスパイシーさを体感できます。お腹が空いている時には要注意。
10、“甘い=正義”を肯定した国民的飲料の香気
部活終わりや銭湯の湯上がりなど、遠い記憶を呼び起こすノスタルジックなパッケージの「コーヒー牛乳」。カフェオレとはまた違う、牛乳と砂糖をふんだん使ったマイルドな味わいが香りにも反映されています。
11、まるごとすいか入り? 夏の風物詩の美味しいフレグランス
夏すいかの名産地である山形県尾花沢産のすいかをまるごとつぶして作ったパウダーが配合された「すいかのお線香」。しずる感たっぷりのパッケージを開けると、赤と緑のツートーンカラーの線香が登場し見た目にも楽しむことが出来ます。実際に火を灯すと、エンドレスサマーな夏の香り。
老舗が放つ本格的な線香の香りをカジュアルに楽しめる「故人の好物シリーズ」。本来の用途の意外でも、好きな香りで心を落ち着けたい時や部屋を清め気分を切り替えたい際などに取り入れるのが、古来から続く線香との新たな付き合い方ともいえそうです。