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CONVERSE ADDICT 10th Anniversary
N.ハリウッド 尾花大輔が語るコンバース アディクト

“定番スニーカー”としての魅力

EM : それにしても[コンバース アディクト]の場合は、特にファンの人の目も厳しいじゃないですか。そういうプレッシャーみたいなものはありますか?

尾花 : そうですね。責任感みたいなものは前よりも感じて来ちゃうようになりましたね。最初の[アディクト]って、「また[コンバース]が新しいの出したんでしょ?」みたいな受け取られ方だったと思うんですけど、昨今では世から見られている[アディクト]のイメージが異常に加熱してきている気がします。ひょっとしたら変なもの出しても売れちゃうかもしれないくらい。当然そうならない様にお互いコントロールには細心の注意をはらっています。

EM : でも買う側にしても「尾花さんが手がけているんだったら、ちゃんと過去の韻を踏んだ、変なものじゃないだろう」という安心感はあると思います。

尾花 : だからすごく普通なものを出しても、「なんだ普通じゃん」とはならなくて、「何で普通なんだろう?」と思ってくれるというかね。まあ、そういう意味でもハードルは高いですよ(笑)。

EM : 下手すれば尾花さんよりももっと「オタク」な方もいるでしょうしね。

尾花 : いやあ、いますよ。スニーカーってファッションのカテゴリーには入っていますけど、時計とかと一緒で、「それしか興味がない」みたいな人も多いし、服装はこだわらないけどスニーカーには凄いマニアが沢山いますから。

EM : そういう中にあって、こうした「定番コンバース」のファッションとしての魅力ってどういうところにあると思いますか?

尾花 : うーん、たとえばその日の格好を足元の靴から考える人って結構いると思うんですね。逆に上を着たあとで玄関で「何履こう?」って思った時に、やっぱり[コンバース]みたいな定番ものって、だいたい着こなしてくれますよね。スポーツウェアに「オールスター」だって着こなし的にはありだし、ここまでマルチに履ける靴ってそうそうないですよね。

EM : 結婚式の二次会なんかで、スタンダードなセットアップに[コンバース]合わせている人とかって、妙に格好良かったりしますよね。

尾花 : それはなぜそうなったかというと、以前は「スーツには革靴」っていうのが当然だと思っていたじゃないですか。でも昔に比べるとスーツのあり方もビスポークから“吊るし”に変わり、今では丸洗いのできるスーツまで出てきている。だから足元だってカッチカチの革靴から、スニーカーに変わってきたのも当然ですよね。そういう中だから、[コンバース]だったら冠婚葬祭までカバーできちゃうみたいな存在になってきているのかなと。

EM : それはやっぱり積み重ねた「イメージの歴史」なんでしょうかね。それともこのフォルム自体の完成度が高いということなんでしょうか。

尾花 : 冷静に見ると、実は[コンバース]以外のブランドも必ず似たようなものを作っているんですよ。仮に「オールスター」とかなり似たようなものを作っても、[コンバース]自体ですら何も言わないですよね。でも[NIKE(ナイキ)]の「エアフォースワン」みたいなものを真似して作ったら非難されます。そういう意味でも特殊な靴なんだなと思います。

EM : 確かにもうこの形が“スニーカー”として馴染んでいますよね。

尾花 : 古着にしても、ランニングシューズの中古ってなんか気持ち悪いんだけど、「オールスター」の中古って結構売っていますよね。それを僕らも普通に買うし。ハイテク系や流行りもの系の靴は汚れていると売れないけど、「オールスター」だったらボロボロのものでも格好良かったら買っていく。これも不思議ですよね。

EM :「オールスター」はなぜかボロボロになっても捨てられないところがありますよね。

尾花 : こないだ[コンバース]がそういうキャンペーンやってましたよね。ボロボロになった私物を写真投稿するみたいな。(編集部注: SNSで展開していた「ゾンビコンバース」キャンペーン) 実際僕もこないだ実家で捨てられなかった[コンバース]が出てきたけど、もはや朽ちてましたからね。またこれで僕が投稿したら面倒なことになるからやらなかったけど(笑)。

 

 “最前線にいるような人ほど、地味な格好をしているんです。”

EM : そうやってお話を聞いていると、[コンバース]の魅力はスタイルを邪魔しないというところなんですかね。

尾花 : 我々の年齢的なものもあるけど、自分の主張とかアイデンティティがしっかりしている人って、できれば見た目というか洋服に邪魔されたくないじゃないですか。あんまりガチャついた格好をしていると、まあそれでも説得力のある人もいるんだけど(笑)、説得力が出ないし、もうちょっと深みのある良さとかを大切にしますよね。「足元にキンキンに派手な最新のスニーカーを履いている執筆家」とかってなんか胡散臭いじゃないですか。例えば建築家とかも、そういう流行りの靴とか履いてて欲しくないですよね。履いててもいいけど、僕はそういう人に土台を組ませたくないかな(笑)。内装だったらいいけど。分かります、この感じ?

EM : すごく分かります。

尾花 : 何でも基礎を作っているような人って、ベーシックなものを着てくれていると安心感がありますよね。海外のフォトグラファーとかジャーナリストを見ていても、最前線にいるような人ほど地味な格好をしているんですよ。でもあの安心感。そういう時に足元に[コンバース]を履いていたら絶対に外さないんですよね。

EM : 最後にひとつお聞きしていいですか? 今回は[コンバース アディクト]が10周年ということでインタビューをさせてもらったのですが、長いと言えば長く、短いと言えば短いこの10年で、尾花さん自身が変わったこと、そして変わらなかったことをお聞かせください。

尾花 : この10年は、その前の10年とは違って、「世の中(のトレンド)が目まぐるしく変わることに対して、自分自身が慣れていった」ところがあると思います。今って作り手もかつてのように「モノを実験して提案し、その結果が良かったものを着地させる」ということが少なくなって、みんな“常に実験で終わっている時代”だと思うんです。で、僕もそれに気づいたんだけど、だからこそ僕は「将来何10年も着てください」というようなものと、今の感覚でアウトプットするものを使い分けられるようになった気がしますね。どうしても“掘り下げてしまう”ところは昔から変わらないので(笑)。

尾花大輔(Daisuke Obana)
デザイナー / 1974年生まれ。古着のバイヤーを経て2000年に[ミスターハリウッド]をオープンし、翌年にブランド[N.ハリウッド]を設立。2002年に初のコレクションを発表し、現在はニューヨークコレクションで発表を続けている。

[コンバース アディクト]2018AW ラインナップ

CHUCK TAYLOR® SUEDE NH KNEE HI ¥28,000+TAX

 

CHUCK TAYLOR® NIGO® Z HI ¥25,000+TAX

 

CHUCK TAYLOR® CANVAS HI ¥16,000+TAX

 

ONE STAR® LOAFER ¥22,000+TAX

お問い合わせ
INFO : コンバースインフォメーションセンター
TEL : 0120-819-217
http://converse.co.jp

《編集後記》
『エバーメイド』は“定番から新定番を探すメディア”ですが、まさに[コンバース]は永遠の“定番”であり、[コンバース アディクト]は“新定番”に当たるものだと思います。尾花さんの分かりやすくも“濃い”お話を聞きながら、[コンバース]がなぜ“定番”であるか、[アディクト]がなぜ生まれ、そして10年も続いているかが分かった気がしました。この先も[アディクト]からどんな新定番が生まれるのか、見ていきたいと思います。(武井)