プロに聞く洗濯術
―♯洗濯ブラザーズに聞く、センタクノシカタ―
オートマティックな洗濯は終わり。あのアーティスト衣装のご指名も受ける、話題のクリーニング店に学ぶ洗濯術。
edit&text_Marina Haga / photo_Erina Takahashi / illustration_Sho Miyata
日々の日課であるはずなのに、これまで一度も習うことのなかった正しい“センタクノシカタ”。「そもそも、スイッチひとつで洗濯機が自動で洗濯をしてくれるし、洗濯にプロセスなんてあるの?」という人もいるのでは。知らないから疑問にも思わない、そんな既成概念的洗濯に「待った」をかけたのが、オリジナル処方のナチュラル洗剤「LIVRER yokohama Laundry Detergent(リブレヨコハマ ランドリーディタージェント)」を引っさげ、ポップアップを中心に “センタクノシカタ”を指南し全国を行脚する#洗濯ブラザーズ。 その実力はかのシルク・ドゥ・ソレイユも認めるほどで、兄弟で営む横浜のクリーニング店「リブレ ヨコハマ」では、国内外トップアーティストのライブ衣装を担当。 今回は話題の陽気な3兄弟・#洗濯ブラザーズの実態を突き止めるとともに、誰もが経験がある日常の洗濯の疑問をぶつけてみました。
前回のスタイリスト森田晃嘉の洗濯術はこちら。
プロフェッショナルな洗濯トリオ ♯洗濯ブラザーズ結成の背景とは
ここ10年で食品やコスメティックの分野においてナチュラル志向が浸透し人々の関心が高まってきているのに対し、アメリカ、とりわけ西海岸のカルフォルニアなどと比べると未だ発展途上である洗濯業界。自らが開発したオーガニック処方の洗剤「リブレヨコハマ ランドリーディタージェント」をかかげ、そこに切り込みを入れたのが、横浜でクリーニング店「リブレ ヨコハマ」を営む#洗濯ブラザーズ。
キャッチーなネーミングは、これまで目立った動きのなかった洗濯業界にジワジワと浸透しつつありますが、同名での活動は2018年2月からスタートしたばかりだと言います。
「父親が全国のクリーニング店のコンサルタントをやっており、それに次男(取材時は不在であった茂木康之さん)が影響を受け、クリーニング屋に洗濯機や乾燥機を勧める営業の仕事についたのがきっかけですね。いろいろクリーニング店を営業でまわる際に、現場を見てこれでいいのかって思ったそうです。そこで自分が理想とするクリーニング店をやってみようということになり、2007年に横浜にクリーニング店『リブレ ヨコハマ』をオープンしました」(長男 茂木貴史さん)
次男がクリーニング店という業態で、一足先に洗濯業界に入った一方で、そのころ長男はオーガニックコスメの輸入に従事。この時点では両者はそれぞれの道を歩んでいたわけですが、ひょんなことから次男の営むクリーニング店「リブレ ヨコハマ」がシルク・ドゥ・ソレイユなどの衣装を担当することに。同じタイミングで、長男は海外から洗剤ブランドを輸入することになり、ここで両者が初めて“洗濯の本質”と向き合うことになります。
「輸入してきた洗剤がどういうものかを知るために、まずは次男に試してもらっていたんですよ。USDAオーガニック認証がついているものだったのですが、衣類も柔らかくなるし環境にもいいけれど、洗浄力が全くなくて、強力な汚れが付いた舞台衣装などは話になりませんでした」(長男 茂木貴史さん)
そんな出来事をきっかけに、USDAオーガニック認証の洗剤をベースにナチュラル成分でありながら洗浄力の高いものを作れないかということになった兄弟。ここから約6年に渡る洗剤開発の構想期間に入ることに。目指すのは、舞台衣装のハードな汚れを落とすレベルの洗浄力をキープしつつ、衣類はもちろんアーティストの肌にダメージがないという、未だかつてない洗剤でした。
「そもそも次男の店の業務効率化のために開発した洗剤だったのですが、そのサンプルをお客さんに配っていたら思いのほか反響をいただきまして。舞台衣装のクリーニング用に作った洗剤を、そのまま商品化したものが今売られている『リブレ ヨコハマ ランドリーディタージェント』です」(三男 今井良さん)
業務用として生まれた無敵洗剤『リブレ ヨコハマ ランドリーディタージェント』の魅力
ツアー中のアーティストの衣装クリー二ングのために作られたという経緯の通り、肌や衣類にもダメージを与えない処方を維持しながら、短時間で、かつ高い洗浄力を強みとする唯一無二の洗剤。加えて、よくある洗濯の悩みとしてあげられる、部屋干しや生乾きの匂い、加齢臭にもアプローチが可能とのことでした。
さらに、洗濯のプロセスとして自然と体に染み付いている洗剤と柔軟剤のセット。この流れ作業のように行なっていた作業にも見直しが必要だと言います。
「洗剤は洗濯後すすぎの工程でに衣類(繊維)から流れ出る設計ですが、柔軟剤はその逆で、衣類(繊維)に残して香りを残すという設計。それなのに、主成分は界面活性剤で化粧品などでも肌に付けることのできない成分が、衣類に残す設計で使われているんです。直接肌に触れるタオルや肌着などをはじめ、僕たちは極力柔軟剤を使わないように呼びかけていますし、オリジナル洗剤は柔軟剤を入れなくても洋服の風合いを保てるように開発しています」(三男 今井良さん)
♯衣服を洗濯するのではなく、ケアするという意識
洗濯機を車に例えると、素人の洗濯はオートマ、プロはミッションだと定義する長男・茂木さん。洗うときに、衣類の汚れや素材に合わせて、水量の設定やすすぎの回数などをすべて見極めていることができるのが重要だと言います。さらに、洗剤を選ぶ一つの指針には、“自分がどうやってその洋服をケアしたいか”を基準に考えればいいとのこと。
「海外のナチュラルな洗剤は、衣類や環境には優しいけれど汚れが落ちない。市販のものだと洗浄力は高いけどダメージを与えるリスクもある。どこに汚れがついているか、自分はその汚れをどう落としたいかを考え、ただ洗濯機に入れるのではなく前処理(予洗い)などをして衣服をケアするつもりで洗うとまた意識が変わってくるかもしれません」
家事の一つとしてこなしていた洗濯に、洋服をケアするという概念を提示してくれた#洗濯ブラザーズ。洗濯業界に生まれたこの新しい波により、この先、洗濯環境や衣類ケアの価値観がどう変わっていくかが楽しみです。
次のページでは♯洗濯ブラザーズに洗濯の疑問をレクチャーしてもらいました。