自虐の開祖・モリッシーを描いたザ・スミス物語『イングランド・イズ・マイン』が公開
edit&text_Marina Haga
弱者を知っているからこそ優しく歌える中二病アンセム
不条理な世の中に対する恨みに皮肉とユーモアを込め、負の感情をパワーに変換して歌うスティーヴン・パトリック・モリッシー。その青春の“しこり”を表現した詩にメランコリックでキレのあるギター旋律を重ねたジョニー・マー。今では別々の音楽に邁進している“元The Smiths(ザ・スミス)”の2人は、ともに自伝を発売(モリッシー『Autobiography』、ジョニー・マー『SET THE BOY FREE』)していることもあり、そこでもザ・スミス時代の様子が語られていたりしますが、そんなコミュ障で皮肉屋なモリッシーを主人公にした映画『イングランド・イズ・マイン』が、日本でも5月31日(金)から公開されるそうです。
J.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』がアメリカで“危険な小説”と言われるならば、70年代後半から続くパンク~ニューウェイヴの渦中で生まれ、熱狂的なファンに支えられたThe Smihsもまたイギリスの“危険なバンド”。モリッシーの内省的な世界観に入り込みすぎて、自殺してしまったファンもいたとか。
本映画は、親と同居の家にこもり、オスカー・ワイルドを筆頭とする文学を読みあさって、ニューヨーク・ドールズのファンクラブ運営をする現実逃避人間であったモリッシーが、ミュージシャンとしてのアイデンティティを確立するまでを描いたもの。彼が影響を受けた、ニューヨーク・ドールズ、ロキシー・ミュージック、セックス・ピストルズなどの70年代バンドの挿入歌はもちろん、現在モリッシーのライブで持ち込み禁止品にリストアップされている、グラジオラスの花を振りまわしながら歌うモリッシーやオーディエンスのライブ風景が、どのように描かれているかが気になるところです。
かつては世の中のすべての負を背負っているネクラなイメージであったモリッシーですが、ソロ活動ではライブ会場に「肉食はいらない」というパネルを展示するなど過激とも言えるほどの動物愛護家を主張し、発言が炎上することもしばしば。一貫してブレのない彼のストイックなパーソナリティーに少しでも興味がある人は、映画公開までにモリッシーの新たなウェブサイト「モリッシー・セントラル」や長場雄さんがイラストを手掛けた『お騒がせモリッシーの人生講座』も合わせてチェックしてみては。
監督・脚本:マーク・ギル
プロデューサー:オライアン・ウィリアムズ(『コントロール』)
出演:ジャック・ロウデン、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、ジョディ・カマー
2017年/イギリス/94分/カラー/シネスコ/PG-12
5月31日(金)、シネクイント ほか 全国ロードショー
http://eim-movie.jp/