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-イラストレーター 長場雄編- 連載「MY DOUBLE STANDARD」

使い続けているのにはワケがある。あの人の2つの定番アイテムにフォーカス。

edit&text_Marina Haga / photo_Erina Takahashi

ファッション関係者、アーティストなど、自らのスタイルを持つ人たちが、自分にとって欠かせない定番をファッションアイテムと雑貨から2つピックアップして紹介する連載「MY DOUBLE STANDARD(マイ ダブル・スタンダード)」。第19回目は、雑誌や書籍の装丁から、広告、アパレルブランドとのコラボレーションなど、愛らしいタッチのドローイングでおなじみのイラストレーター、長場雄さんが登場です。

1、知り合いに勧められて買ったのがきっかけで穿き続けている [VAINL ARCHIVE(ヴァイナル アーカイブ)]のパンツ / 定番暦:3年

イージーなフィッティングとすっきりしたシルエットを両立した、[VAINL ARCHIVE(ヴァイナル アーカイブ)]のパンツ。ウエストのドローコードで絞りをかけることも可能。

ファッションやそれを取り巻くカルチャーと密接なイメージを持つ長場さんですが、自身の定番として専ら愛用しているのが、知人から勧められたことをきっかけに穿き始めた[VAINL ARCHIVE(ヴァイナル アーカイブ)]のパンツだと言います。

「穿きやすいし、穿いているとよく褒められるので服を選ぶ際についつい手に取ってしまいます。今は素材違いで3本持っていて、それをローテーションしている感じですね」

長場さんの仕事の大枠を占めるのが、“イラストを描く”というデスクワークであり、着るものにおいてはそのストレスにならないということが重要でもあります。そういう点でもリラックスして穿けるイージーパンツは有能とのことですが、最近は自分の服の趣向性に少し変化が出てきたとのこと。

「イラストを描いている時に服の着心地は気になるし、重かったりすると嫌なのですが、そうなるとつまらなくなっちゃうので、あまり考えないようにしています。黒や白、ネイビーとか、割と似たような物ばっかり選んでしまうので、最近はそれが嫌になってきて今はいろいろ試してみようかなというような時期でして。そういう意味で今日着ている黄色のパーカは、自分の中で珍しい色のチョイスかもしれません(笑)」

 

2、学生のときに出会った、コンセプチュアル・アートの第一人者、河原温さんの作品集 / 定番暦20年

(上から)世界各地の幼稚園に1週間分の「デイト・ペインティング」を展示したカタログ『Pure Consciousness 1998–2013』、1966-2011年までに制作された日付絵画など『On Kawara 1966』。

シンプルな世界観とモノクロの線画によって、独自のアイコニックなキャラクターを生み出し続けている長場さんですが、イラストレーターとしての活動において多大な影響を受けているのが、日本におけるコンセプチュアル・アートの第一人者として名が挙がる河原温さんだと言います。

「河原温さんは、美術大学に入って現代アートを勉強し始めた時によく名前が出てくる人でした。彼の作品で、年月日をただひたすら描いた絵画作品『デイト・ペインティング』というものがあるのですが、当時は『なんで日付を描くだけでアートになるのか』がよく分からず、ずっと気になる存在として頭の中に残っていたんです。感覚的に惹かれる部分があって、イラストレーターとして活動を始めたときに改めて作品集を買い始めました」

作品集を見る限りでは、作風も異なり一見共通点などないように見えるのですが、長場さんの行ってきた一連の活動スタイルを通してみると、河原温さんの制作姿勢に影響を受けているということが分かります。

「例えば、僕はインスタグラムで1日1点作品を発表しているのですが、これも河原音さんの『デイト・ペインティング』に倣って始めたことなんです。河原さんはこの単色の地に白い文字で日付だけを描いていく連作を、1966年1月に開始してから晩年まで続けてきたそうで、同じく自分の活動のルールと課すようにしています。『デイト・ペインティング』は、毎日欠かさず制作されたわけではないですが、1日に1点制作して、それを発表するという意味では、河原さんの制作姿勢に倣っているのかもしれません。僕の作品集のタイトルになっている『I draw』や『I did』も、実は河原さんの作品のタイトルが『I Read』や『I Met』などの“名詞+動詞”で構成されている物が多いことに影響されていたりします」

 

2016年に「Nepenthes New York (ネペンテス ニューヨーク)」で開催された、長場さんのポストカードアート展「I SEND」の作品も、河原さんの起床した時間を記して起きて送り続けるアート作品「I Got Up at」からヒントを得たもの。


長場雄 / イラストレーター
人物の特徴を捉えたミニマムな線画で表現を行い、広告や書籍、アパレルブランドとのコラボレーションなど幅広く活躍。毎日1点作品が投稿されるインスタグラムのファンも多く、それらはすべて自らの生活に密接にリンクしているとのこと。昨今は、対象とするモチーフにアーティストを選んでいた時期からシフトし、人物のしぐやさ表情にフォーカスしたイラストが多くなっている。