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“実体験からしか生まれない圧倒的な服”
TEATORA(テアトラ)デザイナー
上出大輔インタビュー

同じプロダクトを継続する理由

 

“圧倒的なプロダクトを体験すると、今までのプロダクトには二度と戻れない。”

ファストファッションに代表されるように、次々に更新・消費されるファッションが多い中、良質なクルマや家具メーカーのように、絞られたデザインを継続的に販売している[テアトラ]は珍しい存在と言えます。

「僕自身がそうなのですが、気に入ったものは何枚でも買います。“圧倒的”なプロダクトを体験すると、今までのプロダクトには二度と戻れないのです。ありがたいことに[テアトラ]には僕と同じような買い物の仕方をされる人が多く、実際うちはリピーターの方々に支えられています。そしてこれは意図していなかったのですが、[テアトラ]を着てくださった人が周囲の方々にも機能説明をくれているようで、お店には『友人から解説を受けて来ました』という方も多い。そういった方々のプロダクトへの愛も僕たちが継続して作れる強い要素ですし、これほど開発者冥利に尽きることはありません」

現在では千駄ヶ谷エリアに直営店を構えてはいますが、「知る人ぞ知る」存在である[テアトラ]がここまで拡大してきた背景には、そうした“[テアトラ]を実体験”したユーザーによるリアルな口コミが大きく作用しています。

「開発において最重視しているのは、“そもそも必要であるのか”ということと、“圧倒的であるかどうか”です。そのため、いくら開発費用をかけても販売しない商品もたくさんありますし、到底他社では許されないであろう高原価のものばかりです。それは[テアトラ]が利益率を上げることや売り上げを上げることを目的としていないからです。利益を目的の片隅にでも置いてしまうと、開発目的がブレて、“売るための服”になってしまいます。対象者にとって必要であり、圧倒的であるか。これより重要な目的はありません」

[テアトラ]の機能の「A面とB面」

“目標にし、研究・開発しているのは「一流のビジネスウェア」”

上出さんは、[テアトラ]の服には「主観的機能と客観的な機能がある」と言います。ストレッチや通気が良いといった、着用した人自身が感じる主観的機能は、[テアトラ]にとってはあくまでも“B面”であり、それよりも大切にしているのは風格や品のような、着用している人以外も感じることのできる客観的機能こそ[テアトラ]の“A面”だと考えているそうです。

「機能性というと、防水だとかストレッチすることになりがちです。そういう快適さや便利さはテアトラにとってB面の機能でしかありません。[テアトラ]が最重要視しているA面機能は、“ビジネスのTPOに耐えられるか”。語弊を恐れずに言えば、僕たちが目標にし、研究・開発しているのは“一流のビジネスウェア”であり“ジャケットの形をした便利な服”であってはならないと思っています」

上出さんにとっての都市生活とは、「仕事そのもの」であるといいます。

「だからこそ[テアトラ]の服は“A面”の要素を重視しています。都市におけるビジネスシーンで最も必要な機能はビジネスのTPOに耐えられるかどうか。A面を絶対条件として備え、かつ、1日に何時間座らなければならないのか、どうすればもっとストレスを減らして着ることができるのかという日常の“B面”の要素を満たすよう開発を行っています」

[テアトラ]の収納とパッカプルという機能

スーツケースに[テアトラ]のパッカブルシリーズが美しくパンキングされている写真はウェブサイトにも掲載されているもの。写真左のトロリーは、「スタッフのロッカー代わり」に使っている他社製品。こうした部分にも独特の統一感が感じられます。

筆者が[テアトラ]の服が持つ“機能”の中で好きなものとして、収納とパッカブルがあります。これは着用しなくても見た目で実感できる要素ではありますが、実際に日常はもちろん、出張に行く時などにもかなり助けられています。なぜ[テアトラ]は収納とパッカブルを追求しているのか、上出さんに聞きました。

「そもそも僕がいつも手ぶらがいいというのがありますが、この10年でWi-Fiインフラが整い、働き方が全く変わったことが大きいです。[Apple]がiPhoneのようなオールインデバイスを発明したことで、ビジネスギアにおける大きい持ち物は激減しました。でもその反面、そこにまつわるスモールデバイスはこまごまと増えています。働き方や持ち物が変わったので、それを解決する方法を考えたのが“ハンズフリーシリーズ”で、同じくセキュリティに特化したのが“セイフティシリーズ”です」

iPadも楽に収納できる大きなポケットを備えつつ、パスポートなどの貴重品を収納できるジップ付きのポケットなど、多数のポケットを備えている『デバイスコート』ほど、旅先で強い味方はありません。パックパックを背負いながら、フロントで自在に荷物の出し入れが可能な点も、出先でいちいちカバンから物を取り出すワンアクションを減らしてくれます。

そして、必要のない時はコンパクトに収納できるパッカブルも“あって嬉しい”機能ですが、上出さん自身はそこまで注力をしているわけではなく、補完的な要素だと言います。

「パッカブルシリーズは旅の荷造りを快適にするというコンセプトで、荷物が増えやすい旅先で、帰りには丸めてスーツケースにポンと入れられるラフさ、旅先でもビジネスのTPOに耐えられることを前提にしています。あとは個人的な趣味ですが、ビシッと美しいパッキングができると、行きたくない出張にもすがすがしい気持ちで出かけられますから(笑)」

最終ページは、「上出さんの考える“ファッション”」について