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ファッションと“サステナブル”
MARKAWAREデザイナー
石川俊介インタビュー

“自分の作っている服の中に不幸な流れを入れたくない”

「サステナブルなものづくり」では、環境負荷の側面だけでなく、関わっている人の経済や暮らしの面も非常に重視されていて、石川さんはその点についても具体的な取り組みをしています。

牧場からお店まで見渡す、[マーカウェア]の物づくり

[マーカウェア]の希少なブラックアルパカ100%のコートは無染色。「アルパカは最もナチュラルカラーの豊富な動物で、22色もあると言われています。ウールよりも光沢があって、毛玉になりにくく、長く使えるので、ペルーの人はアルパカニットを3世代に渡って使っていたそうですよ」(石川さん)

一つのファッションのプロダクトが出来上がるまでには、実は膨大な工程があります。コンセプトやデザインに始まり、原料素材の調達から紡績、縫製、そして販売までを把握しているデザイナーは多くはない中、石川さんはそのすべてに目を配ります。

「僕は日本で物づくりをする上でも、日本の生産背景は非常に重要だと思っています。メイドインジャパンはブランドを立ち上げた時からのテーマですが、実は日本ほど小ロットでもこんなに面白いものを作れる国はないんです。人、技術、設備も揃っているので、この生産背景は残さなければならないと思います。もちろん全部の工場は見に行っていて、時間があればできるだけ工場にも通うようにしています」

国内の紡績工場にも足を運び、その物づくりもつぶさに見ている。(撮影 : 石川さん)

中目黒にある[マーカウェア]の直営店、「PARKING(パーキング)」に展示されているブラックアルパカの原毛。触ってみると、驚くほど柔らかい。

マーカウェア]の製品タグには、素材の品質表示はもちろん、紡績から縫製工場に至るまで、その工程が明記されている。

ブラックアルパカのコート ¥120,000+TAX

“買った後で気づいてもらえるだけでいい”

[マーカウェア]において、数年間サステナブルな物づくりを続けてきた石川さんですが、実際に購入している方にその考えや想いは「ほとんどゼロに近いほど伝わっていない」という認識だと言います。

「僕らが伝えるのが上手くないのもあると思いますが、日本でのサステナブルに対する意識はまだまだです。でも、そこはやはりファッションなので、“ただ気に入ったから”買っていただければいいとも思っています。買った時に分からなくても、後々その裏側にあるものに気づいてもらえれば十分なんです。例えば僕はミリタリーアイテムを作っていた時も、後で古着などと見比べてもらった時に『こんなところまでこだわっていたのか』と満足してもらえるようなディティールを入れていました。サステナブルなことに対しても同じように、気に入って買ってくれた人が、長く着ていく間にそういうことに気づいてもらえればいいんです。ただ、僕らは残していかなければならないもののために、こういう物づくりは続けていきます」

石川俊介 (Shunsuke Ishikawa)
[MARKAWARE]デザイナー。1969年生まれ。2002年にレディースブランドの[marka(マーカ)]をスタート。2003年からメンズラインをスタートし、2009年に[MARKAWARE]と[marka]の2ラインを展開。2011年に中目黒に直営店の「PARKING」をオープン。現在は他ブランドのディレクションも手がけるなど多方面で活躍している。


お問い合わせ
PARKING
住所 : 東京都目黒区中目黒1-3-8 渡辺ビル1F
TEL : 03-6412-8127
http://parkingmag.jp

《編集後記》
今回石川さんの取材をして、今盛んに言われている「サステナブル」について大分勉強させていただきました。どうしてもこういう記事は堅いものになってしまうので、読んでいただけたか不安ではあるのですが、これを知って伝えないわけにはいかないな、と少し使命感のようなものを交えて記事化しています。「何かモノを買う時にちょっと考えるようになった」、そんな読後感を持っていただければ編集冥利に尽きます。(武井)