連載「MY DOUBLE STANDARD」
[バンブーシュート]デザイナー 甲斐一彦編

使い続けているのにはワケがある。あの人の2つの定番アイテムにフォーカス。

edit&text_Marina Haga / photo_Erina Takahashi

ファッション関係者、アーティストなど、自らのスタイルを持つ人たちが、自分にとって欠かせない定番をファッションアイテムと雑貨から2つピックアップして紹介する新連載「MY DOUBLE STANDARD(マイ ダブル・スタンダード)」。第8回目は、中目黒の名店「BAMBOO SHOOTS(バンブーシュート)」のバイヤーとしてシーンを牽引し、現在は同ショップの名を冠したブランド[バンブーシュート]のデザイナーを務める甲斐一彦さんが登場です。

01.見つけたらストックしている「US.ARMY FATIGUE PANT」/ 定番歴:25年(ヴィンテージ)

(左から順に)[バンブーシュート]の「FATIGUE PANTS」、60年代後半のヴィンテージ、70年代中盤〜後半ヴィンテージ。[バンブーシュート]のモデルは、60年代後半のモデルのディテールを再現して作られたもの。60年代はダブルステッチにストレートなシルエット、70年代のものはシングルステッチでテーパードしているなど、年代ごとのディーテールの変化にも注目。

学生時代よりヴィンテージアイテムに傾倒していた甲斐さんは、22歳のときに伝説的な渋谷の古着屋「メトロ・ゴールド」に入店し、キャリアをスタート。そこで店頭に立つ際に、制服のように着られる“手頃に買えて面白いディテールの自分だけのアイテム”が欲しいと思い、見つけたのがこちらの通称「US.ARMY FATIGUE PANT(正式な名称はTROUSERS,UTILITY COTTIN SATEEN OG-107)」だったと言います。

「当時は『6ポケットパンツ』の方が人気で、このモデルはあまり注目されてなかったんです。でも価格もこっちの方がリーズナブルだし、よく見ると年代によってディテールが違ったりしていて面白くて。あと、バックサテンという素材もポイントで、これが80年代以降になると綿ポリに素材が変わって、穿いていると毛玉っぽくなってしまうんですよね。古いものはどんどん無くなってしまうので見つけたら買うようにしていたのですが、自分のサイズかつ年代も限定すると、最近はあまり見なくなってきました」

そんなスタイルの軸となるアイテムに立ち返り、[バンブーシュート]と冠したブランドで甲斐さんがこのパンツを手がけたのは創設時となる、3年前。

「自分が物作りを始めるなら、自分がずっと持っている物を作った方が、説得力があるなと思いまして。そこで最初に作ろうと思ったのがこのパンツだったんです」

しかし、当初リーズナブルに手に入ったパンツでも、現代の技術でそのディテールを再現するとなるとコストが掛かってしまうという問題に直面。“手軽さ”を魅力の一つと考えていた甲斐さんはそこだけは譲れなかったと言います。

「何か特別なディテールがあるのなら高くなっても仕方ないのですが、ベーシックなものなので最低でも¥15,000のラインで仕上げたかったんです。メーカーさんの協力もあって、60年代前半のディテールにあるダブルステッチや7mmのベルトループ(70年代以降から徐々に太くなる)を再現して、自分が許せる範囲でデザインを現代的に変更してできたのがこちらの一本。今は古着と同じものを作ると言う概念から少し離れ、アイテムの良さを活かせるよう、アップデイトするようにしています」

(上から順に)70年代中盤ヴィンテージ、60年代後半ヴィンテージ、[バンブーシュート]の現行品。上2つのタグからは、年代やサイズだけでなく年代によってアイテム名が変わっているとのこと。その他にも、ダブルステッチがシングルになったり、ベルトループが太くなるなど近代的に変化しています。

 

02.限りなく“普通”見えて日本製というところに惹かれる。 [CONVERSE(コンバース)]「オールスター ハイカット」の日本製モデル/ 定番歴:26年(「オールスター」)

箱に入れて自宅に何箱も保管しているという「オールスター」。「箱が積み上がっている姿を見ると自分がこの靴が好きなことを実感させてくれる」と甲斐さん。ジャストサイズのパンツを穿いた時の見え方が基準で、ソールが減ったら洗って箱に保管し、新品へチェンジ。

10代の頃は[コンバース]や[adidas(アディダス)]、[Nike(ナイキ)]のバッシュをメインにスポーツ店の倉庫やワゴンセールに探しにいくなど、ヴィンテージスニーカー狂だった甲斐さん。こちらの「オールスター」に関しては、同アイテムの原型である「チャックテーラー」のヴィンテージをはじめ、まだ日本でUSAモデルが買えた時に幾度となく履いてきたモデルだと言います。

「[コンバース]の中では丸っこいフォルムが好きで『ジャックパーセル』も履いていたのですが、そこに音楽のカルチャーが付きまとうじゃないですか。好みの音楽も含めて、俺はキャラじゃないなと思って、カルチャーやシーン関係なく履ける『オールスター』に落ち着いたんですよね」

そんな昔から愛着のモデルを、自身の定番として何足もストックするようになったのは4年前、メイドインジャパンの「オールスター」が発売したことがきっかけになったとのこと。

「ずっとアメリカ製ばかり履いていたのでそれに足が慣れてしまっていたのですが、日本で買えなくなった時に一番抵抗なく履けたのが、この日本製モデルだったんですよね。潰して買ってを繰り返していて、実は今履いているもので4足目。途中価格が上がったことがあったので、また上がるかなと思って、家にストックしています」

アメリカのブランドはアメリカ製、日本のブランドは日本製と言う、シンプルな方程式に則ったようなモノ作りが10代から好きだと言う甲斐さん。また、かつて[patagonia(パタゴニア)]のウエアを[mont-bell (モンベル)]が手がけていたように、日本の工場がアメリカメーカーのアイテムを請け負い手がけると言う生産背景にも心惹かれていたそうです。

「USメイドのモデルって、木型が同じはずなのにつま先のフォルムが両足同じでなかったり、ステッチがズレているなどの歪みがあるんですよね。日本製だと、それが綺麗に作り込まれているから履いていて安心できるんです。その歪みがアメリカ製の味でもあるんですが、今となってはこれくらい丁寧に作ってあった方がグッときますね」


 

 


甲斐一彦 / 「バンブーシュート」のディレクター / デザイナー
中目黒発セレクトショップ「バンブーシュート」を主宰。ヴィンテージとアウトドアに造詣が深く、自身のワードローブを構成するそれらアイテムからインスパイアを受け、ブランド[バンブーシュート]を2015年にローンチ。カート・コバーン(ニルヴァーナ)が流行っていた当時はジャムバンド、フィッシュが好きだったとか。
http://bambooshootswear.com