連載「MY DOUBLE STANDARD」
[エイチ・カツカワ]デザイナー 勝川永一編
使い続けているのにはワケがある。あの人の2つの定番アイテムにフォーカス。
edit&text_Marina Haga / photo_Erina Takahashi
ファッション関係者、アーティストなど、自らのスタイルを持つ人たちが、自分にとって欠かせない定番をファッションアイテムと雑貨から2つピックアップして紹介する新連載「MY DOUBLE STANDARD(マイ ダブル・スタンダード)」。第7回目は、[H.KATSUKAWA(エイチ・カツカワ)]デザイナー、勝川永一さんが登場です。
01.「物作りを初めたことをきっかけにその凄さに気づいた」という[ISSAY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)]のジャケット/ 定番歴:2年
ファッションの入り口は意外にもアメカジ。その後イタリアやフランスなどのヨーロッパ古着をミックスしたスタイルに感化されて、そこに革靴の聖地、英国ノーザンプトンのドレスシューズを合わせるのがお決まりだったという学生時代の勝川さん。古着一辺倒だったスタイルは、自らの物作りに興味が出てくるとともに、[COMME des GARÇONS(コム・デ・ギャルソン)]や[ISSAY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)]などの日本の物作りの巨匠たちによるドメスティックブランドに関心が移っていったと言います。
「物作りという局面に入っていっていくことで、例えばアフリカのプリントなどその国に土着したオリジナリティについて考えるようになりました。日本で言うなら[ISSAY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)]などの服飾史に残るようなブランドの革新的なデザインが、ファッションの記号として成立しているのがすごいなと思いまして」
物作りとカルチャー、歴史や技術などあらゆる文脈からインスピレーションを受けてきた勝川さんですが、自身の物作りにおいてその革新的な技術に注目していたという[イッセイ ミヤケ]の「PLEATS PLEASE(プリーツ プリーツ)」を手にしたのは今から2年前のこと。
「シャツやプリーツなど、[イッセイ ミヤケ]のアイテムは独自に加工しているものが多くて、作り手という立場から見てもそのクリエーションが気になっていました。セットアップで購入して以来、ピッティ・ウォモで海外に行った時や普段着などあらゆるシーンで活用しています。海外に行った時に日本の文化や表現を服で表現するのは難しい中で、オリジナリティもあり、デザイナーとしてのアイデンティティも確立してくれる。そして何より洗濯できる便利さも備えているなんて、非常にエポックメイキングな洋服ですよね」
02. 10年の時を経て日の目を見たエイジングレザー[エイチ・カツカワ]×[PORTER(ポーター)]のバッグ。/ 定番歴:10年(レザー)
プロダクトを作る際、まずは素材を考え、そこからデザインを構築していく事も多いという勝川さん。今回、自身の定番小物としてピックアップいただいたこちらは、実は10年前にリリースしたプリントレザーを使ったシューズを原型としており、それが[ポーター]の目に止まったことで革小物として生まれ変わったアイテムとのこと。
「ニベ革のシューズを発売したタイミングで、バイヤーの方に『次のシーズンはプリントレザーのシューズも欲しい』と言われて、いろいろ試行錯誤をして誕生したのがプリントレザーのシューズ。足元は黒が主流ということもあり、シューズにしては難易度が高かったため、オーダー会でたまに出るくらいだったんです」
このシューズに使われたプリントレザーとは、専用クリームや手の油によって色が変化し、星柄の模様が浮き出るように見えるという一風変わった仕様のもの。ブランドのアイコンでもあるニベ革にも並ぶ勝川さんにとって定番の素材を使った革小物は、このコラボレーションを機に継続アイテムとして店頭に並ぶそうです。
「エイジングする素材とプリントの組み合わせが面白いことに気づいて作ったレザー。それを目利きである[ポーター]の開発担当者に見つけてもらえて、さらに改良を重ね、新しい形でリリースできるのは“最高の再デビュー”と言えますね(笑)」
勝川永一 / H.KATSUKAWA シューズデザイナー、プロダクトデザイナー 大学卒業後に国内の靴メーカー勤務を経て、渡英。イギリス・ノーザンプトンにて靴のデザインと製作を学ぶ。2007年より、自身のブランド[エイチ・カツカワ・フロム・トウキョウ]をスタート。ブランドを象徴するニベ革のシューズは、ノーザンプトン博物館&美術館へ収蔵されており、世界的に評価されている。東京・池尻大橋にはシューズケアショップ「THE SHOE OF LIFE」も展開。 http://hkatsukawafromtokyo.net https://www.instagram.com/h.katsukawa/