-「TRUNK(HOTEL)」アートディレクター 山岡重信編- 連載「MY DOUBLE STANDARD」
edit&text_Marina Haga / photo_Erina Takahashi
ファッション関係者、アーティストなど、自らのスタイルを持つ人たちが、自分にとって欠かせない定番をファッションアイテムと雑貨から2つピックアップして紹介する連載「MY DOUBLE STANDARD(マイ ダブル・スタンダード)」。第16回目は渋谷・原宿エリアのランドマーク的存在にもなった「TRUNK(HOTEL)」でアートディレクターを務める山岡重信さんが登場です。
1.グラフィティーアーティスト、HAZE描き下ろしのロゴが入った「TRUNK(HOTEL)」のオリジナルTシャツ / 定番歴:1年
アパレルやジュエリーのデザイナーとしてキャリアをスタートした山岡さんですが、過去に数々の名作ロゴを生み出してきたことでも知られるグラフィティーアーティストの巨匠、ERIC HAZE(エリック・へイズ)の弟子として従事していたとのこと。その縁もあり、山岡さんが「TRUNK(HOTEL)」のアートディレクターに就任した際に、師匠にロゴをお願いして出来上がったのがこちらのTシャツ。
「ヘイズに初めて会ったのが2001年のことで、遊んでいるうちに意気投合して一緒に何か作ろうということになりまして。そこから交流がスタートして、彼のブランドのジュエリーやグラフィックなどを手伝ったりしていました。2008年ぐらいから一時期疎遠になっていたのですが、今回ホテルを作っているという話を彼にしたら、すごく興味を示してくれて、再びコラボレイトが実現して生まれたTシャツなんです」
そんな2人のストーリーもあるTシャツですが、このグラフィックだけでなく「TRUNK(HOTEL)」の理念に基づいた製法においても、山岡さんのこだわりが詰め込まれていました。
「仕様にこだわり、生地も糸から開発して創っているので、ボディ自体もお気に入りなんです。このTシャツは3型目なんですが、定番であってもシルエットやディティールにも遊びを加え、サイドにスリットを入れて後ろを長めに設定するなど、細部を改良しながら作っています。『一度作ったら完成』ではなくて、スタンダードなものでもブラッシュアップしていく考え方が好きなので、『TRUNK(STORE)』で展開しているアイテムも改良してロットごとに質を高めていきたいと思っています」
2.酒の肴として眺める造形美。乗れるプラモデルである[デローサ]の「チタニオ」 / 定番歴:8年
幼少期からガンダムのプラモデルを顔から作り直すなど、立体物の造形美に対してある種の執着があったという山岡さんですが、「乗るのが楽しくて始めた」という自転車への凝り具合もエンジニアの領域でした。「自転車は機能と造形の塊なんです。例えば車だったら機能が中に隠れているけれど、自転車はそれが表に見えるものなので、そこも力の見せ所と言いますか。また、すべてのパーツがプラモデルみたいにバラせて、さらに乗ることが出来るのも作っていてグッとくる点。お酒を飲みながら出来上がったフォルムを見て、『ここは2mm上げてみようかな』などと妄想するのが楽しいですね(笑)」
写真の[DE ROSA(デローサ)]の「TITANIO(チタニオ)」は、山岡さんの2台目のチタニオで、イタリアの知人から譲り受けたもの。「ebay(イーベイ)」などでパーツを地道に集めて改良を繰り返し、ようやく最高の組み合わせに仕上がったと言います。その造形美を作り上げたのが、90年代のパーツでした。
「90年代は自転車レースが最盛期で、自転車の開発が進んだ時代だったんです。なので面白いパーツや変わった部品が多いんですね。当時はフレームを軽くするために何をやっても良かったのですが、レースのレギュレーションができてからデザインに決まりが生まれて落ち着いてしまって。ただ機能を満たすためだけではなく、デザインが優先される時代のものなので、かっこいいものが多いんです」
そんな山岡さんの趣味が高じて「TRUNK(HOTEL)」のサービスとして生まれたのが、廃棄自転車のパーツを組み合わせて作られたオリジナルのレンタサイクル。山岡さん自身の自転車と同じように、フレームやグリップ、サドルの色を統一し、それぞれが異なるパーツを使用していても統一感を持たせたと言います。
山岡重信 / TRUNK(HOTEL) アートディレクター エリック・ヘイズ氏に師事しグラフィックを学び、ジュエリーデザインやグラフィックデザインなどを行った後、2017年より「TRUNK(HOTEL)」のアートディレクションに従事。現在はホテル内のアートディレクションに加え、「TRUNK(STORE)」のプロダクトデザインやホテル内の音楽を担当している。