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進化する定番。カルティエ「タンク」が100年以上愛される理由について 【いま選ぶべき鉄板ウォッチ】

 

edit&text_Tsuneyuki Tokano

長い間、多くの人々に親しまれている腕時計のデザインには、必ず流行に左右されない力強さが宿るもの。この連載『いま選ぶべき鉄板ウォッチ』では、誰もが認める傑作から、後に語り継がれる未来の定番候補まで、その背景にある魅力を紐解きます。初回を飾るのは、言わずと知れた角型時計の代名詞、[Cartier(カルティエ)]の「タンク」。1917年の登場以来、世界中で愛され続けている“不動のアイコン”の実力とは?

 

 

不世出のハイジュエリーメゾンによる、エスプリを宿す角型時計

ケースのサテン×ポリッシュ仕上げのコントラストが目にとまる1920年製の「タンク」。この時代では大変めずらしい“プラチナ製のケース”を採用。完璧な外装に加え、信頼性の高い[LeCoultre(ルクルト)]社のムーブメントが搭載していたことも挙げられます。© Eric Sauvage

世にある「名品」と呼ばれている腕時計の中で、[カルティエ]の「タンク」が特別な存在であり続ける理由。

それはひとえに、かつてイギリス国王エドワード7世に「王の宝石商、宝石商の王」と賛辞を贈られた“フランス随一のジュエラー”である[カルティエ]が手がけた腕時計であるからです。

「タンク」が誕生したのは、今から100年以上前に遡る1917年(発売は1919年から)。当時は懐中時計が主流の時代であり、機械式時計は一部の人々とのために存在するものでした。ところが、1914年に第一次世界大戦が勃発すると状況は一変し、腕時計の需要が急速に高まります。

[カルティエ]の3代目当主にあたるルイ・カルティエは、「タンク」の生みの親にあたる人物。友人であるブラジル人飛行家アルベルト・サントス=デュモンのため、1904年に「サントス」を開発した近代腕時計のパイオニアの一人であり、生涯にわたりメゾンの発展に貢献しました。

「コンクリートの父」と呼ばれる建築家オーギュスト・ペレに多大な影響を受けていたルイ・カルティエは、装飾に頼らない革新的な腕時計の創造を目指しており、伝統を打破することを目的とした「タンク」が描く力強いフォルムは、まさにそれを象徴するものでした。

 

ファッションデザイナーのジャン・シャルル・ドゥ・カステルバジャックが、タンクの生誕100年を記念して制作した4枚の絵画のうちの一枚。Jean-Charles de Castelbajac © Cartier

「タンク」の独創的なデザインが生まれるきっかけとなったのは、1916年7月に会戦した「ソンムの戦い」での軍事史上初となる装甲車の導入でした。ルイ・カルティエは、フランスに勝利をもたらしたイギリス製の装甲車のラインを元に、同年「タンク」のデザイン画を起こしたと言われています。

ルイ・カルティエの一切の無駄を省いた正方形の二辺を伸ばしたスケッチは、そのまま腕時計のデザインとして採用され、その結果、時計とベルトを繋ぐアタッチメントは姿を消し、ケースと完全に一体化する唯一無二のスタイルが誕生したのです。そこにもうひとつ、カルティエのデザインコードであるリューズ部分のサファイアカボションが加わることで、「タンク」は他の腕時計と一線を画すエレンガンスを醸し出すことに成功しました。

同様に、初代モデルが備えていた放射線状に配されたローマ数字、線路型分目盛、ブルースチールの針はいずれも「タンク」のアイデンティティと呼ぶにふさわしい特徴であり、これらの普遍のデザインコードは時代を超え、後続のモデルへ引き継がれています。

1917年に生誕100周年を迎えた「タンク」のコレクションは、クオーツからコンプリケーションまで揃う多彩なラインナップが並びます。「機能的でありながら、エレガントである」という本質は今もなお変わることはありません。

 

 

セレブレティに愛される、スタイルを決定づけるアイコンウォッチ

「タンク」の一大コレクターであった、アンディ・ウォーホルのセルフポートレイト。 © The Andy Warhol Foundation for the Visual Carts , Inc.

1919年の発売と同時に、「タンク」は“モダニティの象徴”として瞬くに人々を魅了しました。

その前衛的なデザインに先鞭をつけたのは、世界各国の王侯貴族や富裕層、著名人らのセレブレティでした。最先端のファッションを好む彼らにとって、「タンク」の洗練された佇まいは最良のパートナーであり、伝説的なエピソードは枚挙にいとまがないほど挙がります。

「時間を見るためにタンクをつけているわけじゃない。実は巻き上げたことがないんだ。私が『タンク』を身に着けるのは、身に着けらればならない時計だからだよ」

1973年のインタビューでアンディ・ウォーホルが残したこの言葉は、彼のスタイルにとって「タンク」がいかに重要な存在であったかを語ります。同じように、ファッション写真の巨匠アーヴィング・ペンが撮り下ろしたイブ・サンローランの色褪せないポートレイトは、無類と言っても過言ではない「タンク」とファッションとの親和性の高さを証明しています。

時代や流行に寄り添いながら正方形と長方形の間で変化する「タンク」のフォルムは、ジャンルに捉われないスタイルを描き続け、今日では男女問わず愛される“アイコン”として地位を不動のものにしています。

プレタポルテの帝王、イブ・サンローランも「タンク」の愛用者の一人。「マスト タンク」を着用していたことでも知られています。 © Condé Nast Archives

2017年に公開された『パンテール ドゥ カルティエ』のショートムービーの現場でのソフィア・コッポラ。左腕に「タンク」を着用。Andrew Durham © Cartier

 

 

「タンク」の伝統を受け継ぐ、注目すべきメンズウォッチ

今現在、メンズ・レディスともに幅広いピースで展開する「タンク」。その中で1922年に登場した「タンク ルイ カルティエ」は、最もクラシックなスタイルを受け継ぐモデルとして知られています。

3代目当主のルイ・カルティエ自らが愛用していたことでも知られるこのコレクションは、長方形の文字盤を採用し、角とアタッチメントの部分が丸みを帯びていることが特徴として挙がります。メンズモデルでは、ケースの素材をイエローゴールド、またはピンクゴールドから選ぶことができます。

[カルティエ]のエスプリを宿す「タンク ルイ カルティエ」は、流行と対話することを決して怠りません。それゆえ、いつの時代もモダンであり続けるため、ドレスアップからカジュアルまで幅広い着こなしに対応できるのです。

普遍的なデザインコンセプトと時代の変化に対する柔軟な姿勢。すなわち、この2つの柱こそが、100年以上も間、「タンク」が人々から定番として支持され続けている理由なのです。

タンク ルイ カルティエ LM
W1529756、18Kイエロゴールドケース&アリゲーターストラップ、ケースサイズ33.7×25.5mm、クオーツ、日常生活防水、¥1,155,600(税込み) Vincent Wulveryck © Cartier

タンク ルイ カルティエ LM
WGTA0011、18Kピンクゴールドケース&アリゲーターストラップ、ケースサイズ33.7×25.5mm、手巻き(キャリバー8971 MC)、日常生活防水、¥1,458,000(税込み) Vincent Wulveryck © Cartier

 

お問い合わせ先
NFO : カルティエ カスタマー サービスセンター
TEL : 0120-301-757
https://www.cartier.jp/

【編集後記】
連載の初回ということで“誰もが知る腕時計”であるという理由から迷わず「タンク」を選びました。多くのアーティストやでデザイナーにも愛された永遠のアイコンウォッチは「角型時計の入門機」としてもぜひおすすめです。(ライター 戸叶庸之)