シリーズ 「定番再考。」
Vol.01 ニューエラのヤンキースキャップ
誰もが知る定番を再検証する『エバーメイド』の不定期連載企画。
記念すべき第1回は[New Era®(ニューエラ)]の“ヤンキースキャップ”。
——— 俺はヤンキースの選手以上にヤンキースキャップを有名にしてやったぜ(JAY-Z)
“Shit I made the yankee hat more famous than a yankee can,(俺はヤンキースの選手以上にヤンキースキャップを有名にしてやったぜ)”——— ヒップホップ界のカリスマJAY-Zは、Alicia Keysと共にニューヨークを賛歌した曲“Empire State of Mind”でこんな風にラップしています。
JAY-Zの言うこのキャップこそ、今回の企画で紹介する[ニューエラ]のヤンキースキャップです。
[ニューエラ]はMLB(メジャーリーグ・ベースボール)の公式サプライヤーであり、唯一のオンフィールドキャップ、つまり試合中の選手も被っているキャップを製造・供給しているメーカーです。このブランドの名前を聞いてほとんどの人が思い浮かべるのが、このNYロゴの入ったニューヨーク・ヤンキースのベースボールキャップ。とりわけMLB選手たちがゲームでも被っている「59FIFTY®(フィフティーナイン・フィフティー)」というフラットバイザーのキャップは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)ともコラボレーションしているほどの定番中の定番で、ストリートでも目にすることの多いモデルです。
ヤンキースはMLBの中でも屈指の人気を誇る球団なので、そのキャップの人気も当然と言えますが、それにしても野球界を飛び越えてストリートでもアイコン化している背景には、「世界一の人気球団だから」という以上のものを感じざるを得ません。
ヤンキースのロゴデザインは、あの有名ブランド?
まず、その人気の背景にはヤンキースの「NY」というロゴの完成度の高さが挙げられます。ちなみにこの一目でヤンキースと視認できるロゴは、どこの誰が作ったかご存知でしょうか。
実はこのロゴ、なんとあの[TIFFANY&CO.(ティファニー)]がデザインしたものなのです。
1877年、ニューヨーク市警の殉職警官を讃えたロゴを[ティファニー]がデザイン。それを1909年にニューヨーク・ヤンキースがロゴとして採用したという、今では信じられないような秘話がありました。現在では[ティファニー]がデザインしたと知りながら被っている人はほとんどいないはずですが、完成度の高いロゴをデザインしていたのが、現在でもアメリカを代表する宝飾品のブランドだったというのは何とも説得力があります。
ひとりのクリエイターの無茶なリクエストが流れを変えた。
冒頭でJAY-Zの話を引用しましたが、[ニューエラ]のヤンキースキャップを有名にしたもう一人の立役者がいます。それが同じくアメリカの映画監督・プロデューサーのスパイク・リーです。『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年)、『マルコムX』(1992年)などの監督作品の大ヒットというだけでなく、当時ファッション&カルチャーアイコンのひとりとして絶大な影響力を持っていた時期の1996年、「MLBワールドシリーズの観戦用に、赤いヤンキースの『59FIFTY®』が欲しい」と、ニューエラのCEOに直接個人オーダー(!)。それまではMLB用のキャップを淡々と作り続けていた[ニューエラ]とMLBがこれを快諾し、そのスペシャルキャップを被ったスパイクが中継メディアに登場すると、それまでヤンキースのキャップと言えばネイビーにホワイトロゴのイメージしか持っていなかった一般人から熱狂的なバズが起こり、これがその後[ニューエラ]のさまざまなカラーやデザインのカスタマイズが広まるきっかけとなったのです。
現在では[ニューエラ]と言えば数々のファッションブランドやカルチャーと結びついた別注コラボでも知られますが、その流れを作ったのはヤンキースの大ファンでもあるスパイク・リーだったというわけです。つまりここでも[ニューエラ]にとってヤンキースの存在は非常に大きかったと言えるでしょう。
ヤンキースと[ニューエラ]の高度な経済循環
現在までに発売された[ニューエラ]のヤンキースキャップは、一体どれほどの数なのでしょう。単一球団のキャップの売上としてはぶっちぎりの世界一である[ニューエラ]からは、「59FIFTY®」のカラバリや素材違い、デザイン違いだけでなく、他のさまざまな定番モデルの中からもヤンキースのモデルが登場しています。
もはやひとつのデザインプラットフォーム。現在でもワンシーズンに展開されるヤンキースモデルの型数は膨大で、ブランド担当者ですらその数の把握に苦心するほどのようです。
もちろんそれらのパテント料はヤンキースやMLBに支払われているので、スター選手を数多く抱えながら安定的に球団経営ができる基盤のひとつを作っていると言っても過言ではありません。「59FIFTY®」を被った選手たちがスタジアムや世界中のファンを惹きつけ、ストリートに飛び出したヤンキースキャップがまた球団に資金を還元するという高度な循環が成り立っていることも、ファッションプロダクトとして稀有な事例と言えます。
誰もが知っているあのベースボールのキャップの中に秘められたこれらのヒストリーやストーリー。「あまりに有名、メジャー過ぎる」と、これまで被るのを敬遠していた人も、改めてこのキャップを頭上に載せてみるのはいかがでしょう。
ちなみに本場ニューヨークでは最近、クラシックなトレンチコートにヤンキースの「59FIFTY®」を合わせるスタイリングなどが流行っているとか。どんな時代のスタイルにも合う汎用性の高さも、このキャップの魅力です。
“いつでも買える”ネイビー×ホワイトのヤンキースキャップの定番たち
ザ・定番オブ定番。
59FIFTY®
1954年に誕生したベースボールキャップのスタンダード。熟練の職人により、手作業を中心とした22の工程で作り出されます。MLB唯一の公式選手用キャップにも採用されているモデル。アジャスターがないので、自分のジャストサイズを選ぶことが可能です。
オフィシャルECサイトから購入も可能です。→ http://store.neweracap.jp/shop/g/g11449355-700/
クラウンの高さがちょっと低め
LP 59FIFTY®
LPとはLow Profileの略称で、その名の通り通常の[59FIFTY®]よりもクラウンの高さを低めに調整したシルエットが特徴です。こちらもMLBの公式選手用キャップに採用されており、選手は[59FIFTY®]か[LP59FIFTY®]のどちらかを選ぶことができるのです。
オフィシャルECサイトから購入も可能です。→ http://store.neweracap.jp/shop/g/g11449295-700/
スタンダードでアジャスタブル
9FIFTY™
[59FIFTY®]と同様のフォルムながら、アジャスタブル仕様となっており、サイズ調整が可能なモデル。ストリートファッションにフィットする、よりカジュアルなスタイルです。
オフィシャルECサイトから購入も可能です。→ http://store.neweracap.jp/shop/g/g11308467-OSFA/
フロント裏に秘密あり。
9FORTY™
フロント裏の特殊加工が美しいフロント形状をキープするベーシックなベースボールキャップ。ツバの形状は少し曲がっています。リアのアジャスターにはベルクロストラップを採用。
オフィシャルECサイトから購入も可能です。→ http://store.neweracap.jp/shop/g/g11308511-OSFA/
カジュアルな魅力
9TWENTY™
柔らかな被り心地が特徴のカジュアルタイプのベーシックなベースボールキャップ。リアにはクラウンと共生地のコットンのアジャスターベルトを採用しています。
オフィシャルECサイトから購入も可能です。→ http://store.neweracap.jp/shop/g/g11308520-OSFA
2018年秋冬に発売される新定番候補たち
毎シーズン数々の”ヤンキースキャップ”をリリースしている[ニューエラ]。“定番だけど、ちょっと捻りが欲しい”人にはこんなモデルたちも2018年秋冬の新定番としてオススメです。
[BRAND PROFILE] New Era® (ニューエラ) 1920年創設、100年近い歴史を持つアメリカの老舗ブランド。メジャーリーグ・ベースボール唯一の公式選手用キャップサプライヤーであり、そのルーツはスポーツにありますが、数多くのブランド、アーティストとのコラボレーションや、新しいスタイル、カテゴリーの商品を生み続けることで、ファッションやカルチャーの領域でも高い支持を受けています。代表モデルであるベースボールキャップのスタンダード「59FIFTY®」をはじめ、現在ではアパレル、バッグなど多彩なラインナップを展開しています。
edit&text_Marina Haga/photo_Kengo Shimizu / cooperation New Era Cap Japan