野口強が語るデニムスタイル論
そしてMINEDENIMについて。
スタイリストの野口強さんが2016年AWより手がけているデニムブランド[MINEDENIM(マインデニム)]、そして定番論やデニムスタイル論についても語った貴重な独占インタビュー。
edit&text_Yukihisa Takei / photo_Ko Tsuchiya
日本を代表するスタイリストである野口強さん。そのキャリアの中で提案したファッションスタイルの数々は幾度も大きなムーブメントを創り、シーンを牽引してきました。中でもデニムアイテムは常に強い存在感を放ち、トレンドにも影響を与えてきました。
その野口さんが2016年AWから手がけているのがデニムブランドの[MINEDENIM]。東京・神宮前に直営店の「MIND」をオープンし、ザワザワと口コミを中心に広がってきたこのブランドは、30年以上の経験と高い技術を持つ専用工場による生産背景を持つだけでなく、野口さんのデニムに対する美学や経験値、今の時代の感覚が凝縮されています。
今回は東京・新宿の「EDIFICE LA BOUCLE(エディフィス ラ・ブークル)」において9月8日から30日までポップアップが開催されることをきっかけに、「MINED」の店舗でその想いを語っていただきました。自身のブランドにとどまらない野口さんの“デニムスタイル論”は、これまで、そしてこれからのデニムのあり方を知る上でも必読です。『EVERMADE.』独占インタビュー。
“新しいものが入ってこないと、
デニムも面白くないじゃないですか。”
トップスタイリストが見てきたデニムトレンド
EVERMADE.(以下EM): 2016年AWからスタートした[マインデニム]ですが、野口さんはいつ頃からその構想をされていたのですか?
野口強(以下 野口): 今の仕事(スタイリスト)をやっている限り、自分がブランドをやるのは考えたことがなかったんです。今回はいろんな巡り合わせがあって、その前年に突然やることになったけど、自分はデザイナーでもないから、何かに特化したものに絞りたいと思いました。デニムだったらデニム素材のものしかやらない。その中でベーシックなものをやろうと。
EM : これまで野口さんといえば、[Hysteric Glamour(ヒステリックグラマー)]や[WACKO MARIA(ワコマリア)]などと一緒にプロダクトをプロデュースしたことはありますが、自身のブランドをやって来なかったのは、やはり「スタイリストの範疇としてはここまで」、という自制のようなものがあったということですね。
野口 : うん。だから将来的にはこの店も、オリジナルだけじゃない、デニムのセレクトショップみたいな形にしたいんですよね。「大人のジーンズメイト」みたいな店(笑)。ここにラグジュアリーブランドのデニムがあったり、[ヒス]や[UNDERCOVER(アンダーカバー)]のものがあったり、最終的にそういう方向にしたいなと思って。実はそれってありそうでない店だから。
EM :それも野口さんならではのセレクトで、ということですよね。ちなみにこの20〜25年くらいというのは、デニムの歴史の中でもおそらく「最も変遷が激しかった時代」で、その中でシルエットや加工のトレンドも変わりました。そんな渦中にいた野口さんは、その流れをどうご覧になってきたのかが興味深いのですが。
野口 : 結局オーセンティックなものに関しては[Levi’s®(リーバイス®)]には勝てないわけですよ。その中でレプリカも出てきて、海外の加工クオリティも上がってきて、ラグジュアリーブランドが提案するものが出てきた。一方日本ブランドの中にも別のベクトルでの自分の定番はあります。自分的にはどっちもアリだし、やっぱり新しいものが入ってこないと、デニムも面白くないじゃないですか。
EM : そうですね。それはスタイリストとしての目線でもそうですか?
野口 : 変わり映えしないと、スタイリングやっている自分も面白くないですよ。かつてエディ・スリマンが([ディオール・オム]で)やったみたいなスキニー、[ドルチェ]がブーツカットを出したり、[マルジェラ]のスリーピースとか。そういう新しいデニムの提案って、外国の方が上手だったでしょ。日本は高い技術があって、「501®」を超えるようなものまで作ることにおいては上手いけど、日本人はやっぱり頭が硬いのかもしれない。こだわり過ぎちゃう。でもラグジュアリーやデザイナーズブランドがやるものは、提案が新しくて面白いなと思ってきました。
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