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“実体験からしか生まれない圧倒的な服”
TEATORA(テアトラ)デザイナー
上出大輔インタビュー

その機能は「働く人」のため。定番10型をベースに構成されているブランド[テアトラ]の服が世界を魅了する理由。

edit&text_Yukihisa Takei / photo_Ko Tsuchiya

ファッションに機能を求めるのは今に始まったことではなく、アウトドア、ミリタリー、ワークウェアなども、“そこに求められる機能”が素材やデザインを生み出してきました。特に近年は素材の開発も進み、その機能にも多様性が生まれています。そんな中で[TEATORA(テアトラ)]も近年の“機能ウェア”とも呼ばれるブランドのひとつですが、単なる“ハイスペック・ウェア”ではなく、そこには今の時代に都市で働く人のための機能が高次元で表現されています。

今回『エバーメイド』では、じわじわと浸透を続け、いま多くの人が注目するようになった[テアトラ]のデザイナー・上出大輔さんにインタビューの機会を得ました。あまりメディアに出て語ることの少ない孤高のクリエイターが[テアトラ]に込めているものとは。

着続けることで分かる服

今回はその方が伝わることを期待しつつ敢えて申し上げると、当記事の編集者自身が[テアトラ]のユーザーの一人です。昨年このブランドの「デバイスコート」を、今春に「ウォレット・パンツ」を購入し、その実用的機能とデザイン的な心地良さを体感した結果、今ではかなり登板頻度の高いワードローブのひとつになっています。

なぜそれを冒頭にお伝えするかというと、[テアトラ]の服は普通の服以上に「着ないと分からない」、もしくは「着続けて分かることが多い服」だからです。

そういう意味でも、このインタビュー記事を読んでいただいただけでは[テアトラ]を理解してもらうことは難しいかもしれません。しかし今回は同ブランドで久しぶりの新作であるダウンジャケット「EVAPOD」の発売というタイミングもあり、滅多にメディアで語ることをしない上出さんに話を聞くことのできる好機を得たので、メディアとして、そして個人としても気になっていたことをお聞きしました。

なぜ[テアトラ]を着る人が増え続けているのか、その答えは極めて慎重な語り口の上出さんの言葉の中にありました。

“どうせ人生を賭けるなら、仲間や自分が尊敬する人たちの役に立つ服を作りたい。”

[テアトラ]デザイナーの上出大輔さん。千駄ヶ谷の直営店のバックヤードにて。

たった2型のパンツから始まったブランド

通常、ブランドを始める際には少なくとも10型、もしくはそれ以上のプロダクトが用意されていることが普通ですが、2013年にスタートした[テアトラ]にはたった2型のパンツしかありませんでした。そのパンツとは、「座ることの多い人に向けて」機能的に開発されたデザインのもの。主に立ち姿にフォーカスされるパンツが多い中、その意外な視点に注目が集まりました。

しかしブランド設立から6年が経った現在でも、[テアトラ]の基本の型数は10型。そこをベースに限られた素材やシルエット、カラーバリエーションでコレクションが構成され、そのほとんどが継続的に販売されています。常に新しいものを出し続けるファッションの中にあって、珍しいこの[テアトラ]のスタイルに至るには、自称「雇われデザイナー」を長年経験していた上出さんの、「洋服を作るプロセスに対する強い疑問」があったといいます。

“1シーズンに100型、年に200型も作らなければならないことが洋服業界の「普通」になっていることに強い違和感を感じました“

「1シーズンに100型、年に200型も作らなければならないことが洋服業界の“普通”になっていることに強い違和感を感じました。家電やクルマのメーカー、お菓子や文房具のメーカー、どんな業界でも、そんなペースでものづくりをしている業種はない。[テアトラ]では100型、200型を作らない代わりに、そのすべての費用や時間を1型に極端に偏らせることで、“圧倒的”な1型を開発するという理念をもとにスタートしました」

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