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“実体験からしか生まれない圧倒的な服”
TEATORA(テアトラ)デザイナー
上出大輔インタビュー

実体験をもとに創られる“圧倒的”で役に立つ服

インタビュー中、上出さんから頻出したのがこの“圧倒的な”というキーワードです。“圧倒的”というのは、インパクトの強さや豪華さの意味ではなく、あらゆる側面で高い実用性を持っていることを指しています。

「1型集中という開発方法は開発費、開発期間において社運を賭けるに等しく、とてもハイリスクです。どうせ人生を賭けるなら、仲間や自分が尊敬する人たちの役に立つ服を作りたいと考えたのがテアトラの始まりです。テアトラでは機能やコンセプトをデザインするにあたり、自らが実体験をしなくてはデザインしてはいけない、というルールを設けています。予想や憶測で作られたものでは役に立たないからです」

上出さんの言う“実体験が生み出す物づくり”とは、逆説的に言えば「雪山に登ったことのない人間からは雪山のためのギアは生まれない。飛行機のファーストクラスに乗ったことがなければ、ファーストクラスの座席設計はできない」という考え方。[テアトラ]の場合は、上出さん自身が実際にさまざまな働き方に身を置いて、違和感やストレスをリアルに体験することで「これは絶対に必要だ」と言い切れる確信を持つことからスタートしているといいます。

[テアトラ]独自の「ギアチャート」。すべてのアイテムは用途やTPOによって機能が分かれており、それを一目で確認できるようになっています。

たとえば[テアトラ]が独自に作成している「ギアチャート」で、ひとつのレンジである「SOLOMODULE(ソロモジュール)」では、「①長時間のフライトのストレスをキャンセルする、②フルフラットシートのような快適さを追求する」ために、上出さん自身が飛行機のファースト、ビジネス、エコノミークラスを交互に何回も乗り分けることで「最大のストレスとリラックスを体験」して、開発前の検証や実証テストを行っているそうです。

ファッションの世界では「○○からインスピレーションを得て」というキーワードが頻出しますが、[テアトラ]の開発には「“知っているとか、見たことあるとか、僕も同じことを考えていた”ではデザインしてはいけない」という上出さん独自の哲学が反映されています。

この秋新たに登場した[テアトラ]初となるダウンのプロダクト「EVAPOD」は、ロングとショート丈の2種類展開。羽織って分かるのは、驚くほどの軽さ。ショートで約600グラム、ロングでも約750グラムという軽さは、着用しているのを忘れられるほど。

新作ダウンの「EVAPOD」を試着する上出さん。[テアトラ]におけるダウンの考え方は、都市で使うことを前提にしているので、極地用ダウンの「熱を逃がさない」設計ではなく、「冷気を積極的に取り込む」考え方。フードが特殊に立ち上がり、首回りはマフラーのように常に風の侵入を防ぎ、袖やフロントは熱を逃がしやすい仕組みは、上出さん曰く「暖房しながら窓を開けているような状態」。これも真冬でも暑いオフィス内、電車やタクシーなどに乗った時の“暑すぎ”ストレスを減らすため。

次のページは、「同じプロダクトを継続する理由」と「[テアトラ]の機能面について