連載「新・定番論」
Vol.2 T-マイケル 編
“僕が作るものは、旅など生活の一部ではなく、僕の生活や人生そのものが必要としているものなんだ。”
[T-マイケル 新定番の3品]
その1 両腕のブレスレット
T-マイケルさんの一つ目の新定番は、両腕にしているブレスレット。買った場所も時期も違うというそれぞれは、普段から肌身離さずに着けているものだそうです。
左腕にしている真鍮のブレスレットは、7年くらい前に地元ノルウェー・ベルゲンのショップ「LOTE333」で購入したという、ベルギー人デザイナーのイヴォン・コーネによるもの。
「僕は自分で身に着けるもののほとんどを自分で作ってしまうので、普段はあまり買い物をすることがないんだ。これはたまたま地元のお店で見つけて、『これは自分のためのものだ』と思った。西アフリカのブレスレットがモチーフになっているもので、デザイナーのイヴィンはバッグデザイナーとしてデンマークでは知られた存在なんだけど、ジュエリーを作っていたのはほんの短い間だったので、もう売っていないんじゃないかな」
右腕にしているのは、1年半ほど前にデンマークのヴィンテージショップで見つけたというブレスレット。「1960年代後半のものらしい」ということしか分かっていないそうですが、アクセサリーでは珍しい錫(すず)製なので気に入って着けているそうです。
どちらのブレスレットも、ブランドや年代といったものにこだわらず、T-マイケルさん独自の目線でチョイスしたもの。自分の基準で合うものを選び、馴染ませることができるのも、スタイルのある人のなせる技と言えるでしょう。
その2 [T-MICHAEL]のカシュマラ・マフラー
取材当日にも着用していた落ち着いた色合いのマフラーも、自身の[T-MICHAEL]のプロダクト。こちらはラマから取れたカシミアのような柔らかい肌触りの「カシュラマ」という素材を使ったもの。
「南アメリカのボリビアで作られているもので、3年前は自分のためだけに作ってもらった。自分で使ってみて良かったので、今は[T-マイケル]のコレクションに入れているよ。僕は自分が使わないものは絶対に作らない。だからこれも自分のコレクションでデビューさせたんだ」
その3 ファブリック確認用のルーペ
「T-Fold」のクラッチの中に折り畳まれて出てきたのは、3つ目の定番品の携帯用ルーペ。2〜3年前から携行しているというこのルーペは、ファブリックなどを見るために持っているもの。生地を拡大して見ることで、織り方など、その表情生み出しているものを確認します。
「自分が素敵だなとか、好きだなと思う生地の素材が見つかると、その組成を見て研究するんだ。そして自分が物作りをする時に説明して、作ってもらえるようにしておくためのもの。ちょっとオタクっぽいけどね(笑)」
さりげなく取り出したこのルーペにも、研究熱心なT-マイケルさんの姿勢が垣間見えます。
[T-マイケルにとって、“定番”とは?]
最後にT-マイケルさんに、「ご自身にとっての定番とは?」という質問をぶつけてみました。
“定番というものがあることによって、スペシャルなものが存在できる。スペシャルなものがあるために必要な存在が定番なんだ。そして自分にとっては、何かを創り出したいと思う原動力でもあるんだ。”
T-マイケル(T-Michael) アフリカ・ガーナの生まれでノルウェーに渡りビスポークを学び、現在はノルウェーのベルゲンをベースに活躍するデザイナー。自身の名を冠したブランド[T-MICHAEL]の他、数々のデザインアワードを受賞しているレーベル[ノルウェージャン・レイン]のデザイナーでもある。近年は[Y&SONS.]とともに新解釈の着物[T-KIMONO]を手がけるなどその活躍の場を広げ、2019年には[T-MICHAEL]と[ノルウェージャン・レイン]のショップを東京都内に出店予定。
TEL : 03-5725-1160
《編集後記》
今回の記事を見てお分かりいただける通りT-マイケルさんはとにかく”お洒落”な方で、ピッティ・ウォモをはじめとするファッションスナップで常連なことも頷けます。それも「自分で身に付けたいものは自分で作ってしまう」という言葉の通り、すべてご自身の基準でモノ選びをしているからでしょう。なかなか真似のできないセンスですが、自分の定番を持つことのヒントはこの記事の中にもあると思います。(武井)