カルティエ「タンク」とBEDWIN 渡辺真史さんとの関係
-あの人と定番ウォッチ Vol.2-
買って後悔しない時計が欲しいけど、何を買ったらいいのか分からない。そんな人は多いはず。その時ひとつの指針となるのが、各ブランドで長年展開し続けている定番の数々です。この連載では、腕時計とそのオーナーとの間にあるマイ・ストーリーから「定番」と呼ばれているモデルの魅力を紐解きます。第2回のゲストは、人気ブランド[BEDWIN & THE HEARTBREAKERS(ベドウィン & ザ・ハートブレイカーズ)]を運営する「DLX」の代表取締役兼ディレクターである渡辺真史さん。普段の着こなしの話とともに、角型時計の代名詞のひとつである[Cartier(カルティエ)]の「タンク」を中心に触れていきます。
“角型時計の大定番『タンク』を、いかに自分らしいファッションで嗜めるか”
「腕時計は実用品であるし、嗜好品に例えられることが多いと思いますが、僕はあくまでファッションの一部として捉えています」
そのように話す渡辺さんの考えはとてもシンプルに聞こえます。
「僕の時計遍歴は、若い頃のカジュアルウォッチの購入にはじまって、そこから年齢を重ねるにつれて、機械式時計を嗜むようになりました。中でもはじめて買った角型時計である[カルティエ]の『タンク』は、僕の中で定番中の定番です。[Jaeger-LecCoultre(ジャガー・ルクルト)]の『レベルソ』も好きで以前はヴィンテージを所有していましたが、さすがに1930年代の時計となると普段使いするにはいろいろと厳しい面があって(笑)、結局手放してしまいました」
それに続いて、渡辺さんは、「タンク」が持つプロダクトとしての魅力、背景にあるストーリーにも強く惹かれていると話します。
「僕が『タンク』を購入した理由として、ドレスウォッチが欲しかったことに加え、周りの人たちとかぶらない時計だったことが挙がります。こちらの『タンク ルイ カルティエ』は少し前の復刻モデルになります。特別レアな時計ではないだろうから、探せば同じモノが見つかるかもしれません。僕にとって、時計の希少性よりも大切なことは、[カルティエ]屈指の大定番である『タンク』をいかに自分らしく楽しめるか。そこに尽きますね」
[Hanes(ヘインズ)]のTシャツ、あるいは[LEVI’S® (リーバイス)]の「501®」のように、誰もが知る定番アイテムだからこそ着こなしにこだわりたい。このように考える渡辺さんがたどり着いたひとつの答えがあります。
「アーヴィング・ペンが撮影したイブ・サンローランの有名なポートレイトのように、ジャケットやシャツの袖口に『タンク』を合わせるスタイルにも憧れますが、僕は前々から角型のドレスウォッチをつける時は、リーズナブルな無地Tやワークパンツとコーディネイトすることが多いです。とはいえ、頑なにスタイルに固執しすぎるとファッションから遠ざかってしまいますから、肩肘を張らずに自由なスタンスで楽しみたいと思っています。時計に限らず言えることですが、本物の定番は、年齢や経験を重ねると見え方が変わって、新たな魅力を再発見することができる。だから、この数年後、僕の『タンク』に対する見え方も変わってくるかもしれません」