素人目線でプロに聞く。
そもそも[ライカ]って、何がすごいの?
シリーズ「定番再考。」特別編

「写真を撮る」ための道具としてのちょうど良さ

EM :[ライカ]は本体もそうですが、レンズが非常に良いと言われていますよね。

清水 : そうですね。レンズの良さは大きいです。僕は最初に買った時に一緒に買った「ズミクロン」の50ミリです。飽きたら次のレンズを買おうかと思っていたんですが、仕上がりをみたらズバリ僕の好みで。もうこのセッティングでずっと飽きていない。

土屋 : 僕も少し古い「ズミクロン」の50ミリ f2と、35ミリ f2しか持っていないです。僕らのレンズは、マニアの人から見れば「けっ」って感じかもしれないですよ(笑)。[ライカ]の中でも一番普通のレンズなんで。でも僕も清水さんもこれがいいというだけ。

清水 : そして「ライカM9」というのは、ちょうどデジタルとして境い目のカメラで、このあとセンサーが変わるんです。

土屋 : 僕も同じ理由で「ライカM9」を買いました。今のカメラはほとんど「CMOS(シーモス)」というセンサーですが、ちょっと前のカメラは「CCD」というセンサーでした。この「M9」はその「CCD」。少しだけ特殊な色の上がりをするんです。

清水 : 現行のデジタル一眼レフは優秀でCMOSなので、「ライカM9」の方がちょっとクセがあって使いやすいんです。

EM : センサーで違うものなんですね。

土屋 : 僕も何度が新しい機種の「ライカM」と「ライカM10」を使わせてもらったことがあるんですけど、今のカメラっぽくて現代的なんです。バランスがいいというか、誰もが使ってもいいものになっているというか。

清水 :「ライカM9」は、良くも悪くも偶然性がありますよね。それでいて発注主も満足させられるものが撮れる。僕はこのカメラは制限がある道具として、その制限を楽しんでいます。白山眼鏡の仕事の時も、あまり長時間撮影できない人もいると考えたら、[ライカ]しか選択肢がなかったんです。むしろ[ライカ]以外だと不安ですね。たぶん土屋さんが同じ依頼を受けたら、同じ選択をすると思いますけど。

土屋 : すごく分かります。自然光のライティングさえあれば、本当に信用できるカメラです。

清水さんがデジタルの「ライカM9」で撮影した「白山眼鏡」の写真集より。
「白山眼鏡」の写真集より(撮影 清水健吾 ライカM9で撮影)
「白山眼鏡」の写真集より(撮影 清水健吾 ライカM9で撮影)
「ライカM9-P」で自然光のみで撮影した土屋さんの作品。

昔から信用されてきた道具は、やっぱり信頼できる。(清水)

清水 : そう、「信用」ですよね。昔から信用されてきているわけですから。まあ何でもそうですよ。クルマだってそうだし、ハーレー(ダビッドソン)だってみんな追い求めているのは1930年代のものですから。昔から信用されてきた道具は、やっぱり信頼できる。

EM : それこそ『エバーメイド』のコンセプト。でも、食器とかと違って機械は常に進化をするものですよね。[ライカ]は機械モノなのに、なぜ今でも信用できるんですかね。

清水 : それは目的が“写真”だからだと思いますね。もう技術的にある程度のところまで行っているし、ここから劇的に変わるものでもないからというか。

土屋 : そうですね。たとえばアマチュアやハイアマチュアの人が使うようなデジタル一眼レフって、どんどん機能の進化重視になっているじゃないですか。連写が早いとか、Wi-Fiが使えるとか。[ライカ]ユーザーは昔から同じスタンスで写真を撮っているので、別に連写もいらないし、いつものようにその一枚が撮れればいいわけで。ベクトルが違うんですね。

清水 : だからいまカメラにおいて進化して行っていることって、もしかしたら“写真”とは関係ないのかもしれないですよ。写真を撮る行為とか、写真1枚の魅力とは関係のない進化をしている。

土屋 : 誰もが撮れるようになってきているんですけど、それは本質的に「写真をどう撮るか」ではないんですよね。[ライカ]の面白いところは、この「ライカM9」なんかフィルムの[ライカ]のフィルムを入れるのと同じところに電池とSDカードを入れるところがあるんです。利便性ではなく[ライカ]らしさをいかに残すかをやっているんですね。中のCPUは発展するので、もちろん最新のものの方が優れています。「ライカM9」はちょっと昔のカメラなので画素数も1800万画素とちょっと少ないですけど、A4サイズくらいで見る分には十分です。

清水 : 僕もそれ以上のスペックは特に必要ないというか。

土屋 : 僕は人の取材ものが多くて、バックステージも多かった。一眼レフを持っていくのも重いし、もっとドキュメンタリーなものにできないかと思って[ライカ]にしましたが、撮りたい瞬間が撮れたり、思いもしないものも撮れる。みんなジャスピン(ピントが合っていること)の写真を欲しがるんですけど、これは求めなくてもいいカメラというか。仮にピントが来ていなくても全然自分の中ではOKだし、見た人もOKになるんです。

清水 :「失敗かなと思いきやいい写真だった」というのは[ライカ]には多いですよね。どこか魔法的な。

パリで撮影された[ファセッタズム]2019SSコレクションのバックステージ。(撮影 土屋航)

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