古着はOK? これからのファッションは買い方が鍵。テクスト デザイナー、石川俊介さんが新しい買い物の価値観を指南【後編】
edit&text_Marina Haga / photo_Erina Takahashi / cooperation Shunsuke Ishikawa(Text Designer)
【後編】は[テクスト]が示唆する未来の買い物について
ファッションにおいて何を着たいかという意思はもちろん、その選択の仕方やこだわりは人の数だけ存在するもの。世の中は増税を目前に控える中ファッションの新シーズンが立ち上がり、いろんな意味で買い物を仕切り直すこのタイミングで提案したいのが、今シーズンはこれまでの自身のモノ選びの価値観に、「サステイナブル」という別の視点もプラスしてほしいということ。
昨年秋に[MARKAWARE(マーカウェア)]のインタビューで、サステイナブルについて説いてくれた石川さんでしたが、そこからさらにその取り組みが熱を増し、この秋よりサステイナブルに特化したユニセックスブランド[Text(テクスト)]をローンチ。前回のインタビュー時より、さらにその本質にまた一歩近づきつつある石川さんに、新ブランド[テクスト]を通して見えてくるサステイナブルな未来の買い物の哲学を、前編・後編と2回にわたって紹介します。
目次 1.新しい時代の洋服の選び方【前編】 2.いまこそ消費者が変わるタイミングな理由【前編】 3.[テクスト]を知れば未来の買い物が見える【後編】
3.[テクスト]を知れば未来の買い物が見える
前編での未来の買い物哲学はもちろん、[マーカウェア]を通してサステイナブルなことに取り組んできた石川さんですが、なぜこのタイミングで新ブランド[テクスト]をスタートしたのでしょうか。その理由やブランドの物作りのバックグラウンドをうかがうと自然と未来のアパレルの仕組みが今後どう変わっていくかが見えてきます。
環境の負担を助ける有色アルパカから生まれたニット
前回の[マーカウェア]のインタビューは、サステイナブルについてその本質に疑問を持った石川さんが、その使命感から自ら答えを探しに現地に赴いたまでを語ったストーリー。そこから今は、さらにその根源に迫りつつあるとのことで、生産者に近い活動をする人たちと一緒に原料の調達を行なっているとのことでした。
「例えばニットの原料になるアルパカの毛にしても、かつてはさまざまな色の毛が使われていた中で化学染料が出まわるようになると、どんな色にも染められる白が好まれるようになりました。一方で染めに向かない有色アルパカの危機は1950年から現在に至るまで続いていました。近年、自然環境への意識の高まりとともに動物の自然の姿が見直されつつあり、そんな有色アルパカを使って今回作ったのがこちらのニット。有色アルパカが普及してくれることを願って他にもさまざまな使い方をしながら素材を提案しています」
消費ニーズが高いコットンこそ選ぶ際に意識するのが重要
市場に出回っている従来のコットンTシャツは「2800リットルの水と150gの殺虫剤」 から出来ていることをご存知ですか。このようにその原料であるコットンを育てるた めに遺伝子組み換え種子と化学合成農薬で綿を作る仕組みがあるなど、環境負荷に大きな影響を与えています。
「少しでもこの現状をよくするために推奨したいのが、人と牛と自然の力のみで作られたオーガニックコットン。もちろん、[テクスト]で使用するコットンは すべてオーガニックであり、今シーズンは 希少なインドやペルーの伝統的な農法で作るオーガニックコットンを採用しています。このように環境問題をクリアしたコットンを選ぶことはサステイナブルの第一歩です」
「ダイバーシティー」や「ジェンダーレス」に根付いた服
ファストファッション全盛期に、その時代性に逆らうように日本製にこだわった物作りをスタートし、それ以降はトレーサビリティやサステイナブルの概念を取り入れたアイテムを作り続けている石川さん。今回新たに[テクスト]という別ラインでスタートした大きな理由は、既存の顧客たちだけでなくより多くの人にその価値観を届けたいという強い思いがあったからだといいます。さらに、ジェンダーレスというサステイナブルの価値観に基づき、レディースウエアにもフォーカスし、ユニセックスで楽しめるアイテムラインナップなのも魅力です。
アパレルが現実的に不可能なことを実現した[テクスト]
ペルーやインド、パタゴニアなどの現地に行き原料の買い付けると言う輸入商社的機能から工場との直接のやり取りまで、すべてを請け負って生産をしている[テクスト]の物作り。大手メーカーならまだしも、多大なリスクと利益の追求を無視してでも 、サステイナブルを追求する石川さんの姿勢から、世の中に対するカウンターにも受け取れます。
政治的な理由からやれない、大企業でも実行できない[テクスト]の価値のあるアクションが、今後どのように広がりを見せて、カウンタームーブメントになってい くか楽しみです。
石川俊介(Shunsuke Ishikawa) EXISTENCE co.,ltd 代表取締役/ [MARKAWARE]デザイナー。1969年生まれ。2001年にレディースブランドの[marka(マーカ)]をスタート。2003年からメンズラインをスタートし、2009年に[MARKAWARE]と[marka]の2ラインを展開。他ブランドのディレクションも手がけるなど多方面で活躍している中、2019年秋冬シーズンより、サステイナブルに特化したユニセックスライン[Text]をスタート。