共通テーマは「距離」。『天気の子』ついに公開!新海誠監督の過去作を振り返る 05.続いていく人生の中で、少し雨宿りをしたくなったなら『言の葉の庭』
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edit_Makoto Hongo / text_Marina Haga / photo_Nahoko Suzuki
感情が沸き立ち、何かが動き出す永遠不変な夏アニメ
“秋の思い出”と言えば月並みですが、それが夏の出来事となると過去の情景を鮮明に思い出したり、ノスタルジーに駆られることも。真っ青な空や夕方から夜に変わる時間の空気、庭に咲くひまわりなど、日常に潜む美しい瞬間が切り取られ残像として覚えています。 日本国民にそんなイメージを強めさせる要因のひとつとして上げられるのが、夏アニメ。細田守監督の『時をかける少女』も、ジブリ作品『耳をすませば』や『コクリコ坂』も夏が舞台だったりします。 “夏の日出来事”を描いた多くの作品がある中で、新海誠監督もまた夏に青春と懐古感を結びつける監督の一人。夏に空を見上げると思わず“新海誠っぽい空”を見つけることもあるほど、幻想と写実の狭間を描いた世界観に心を動かされます。ここでは7月19日(金)より公開の『天気の子』に先駆けて、公開日までカウントダウン形式で作品をプレイバック。本人のTwitterによると、7月7日に作業が終了したばかりの出来立てほやほやの最新作を楽しむにあたり、どの作品にも共通するテーマであるキーワード「距離」にも注目を。
01.『ほしのこえ』はこちらから。
02.『雲のむこう、約束の場所』 はこちらから。
03.『秒速5センチメートル』はこちらから。
04.『星を追う子ども』はこちらから。
05.『言の葉の庭』 / 2013年公開
続いていく人生の中で、少し雨宿りをしたくなったら
聖地:東京都新宿(新宿御苑)、渋谷
その映像を見ただけでも雨音が聞こえてきそうな、儚げなアニメーション。そんな映像美を効果的に使って描かれているのが、「雨の日は地下鉄に乗れない病」という、学校に行けない冷めた高校生と、教師であることを隠して彼に近づくミステリアスな女性の孤悲の物語、『言の葉の庭』です。2人が交流するのは雨の日の午後だけという設定ゆえ、その関係性を象徴するビジュアルとしての雨のシーンが多いのが特徴。この雨は一時的な避難である“雨宿り”という意味に加えて、人生の雨宿りというダブルミーニングで、2人の感情の強弱によって雨の強さも変化していくのも見ものです。そしてラストは、これまでの新海誠作品では珍しい未来の希望を予想させる結末というのも大きなポイント。教師の女性は、次作『君の名は。』にも登場しており、そちらでその後を見ることができるのも感慨深いです。