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共通テーマは「距離」。『天気の子』公開記念!
新海誠監督の過去作を振り返る

 

edit_Makoto Hongo / text_Marina Haga / photo_Nahoko Suzuki

感情が沸き立ち、何かが動き出す永遠不変な夏アニメ

 “秋の思い出”と言えば月並みですが、それが夏の出来事となると過去の情景を鮮明に思い出したり、ノスタルジーに駆られることも。真っ青な空や夕方から夜に変わる時間の空気、庭に咲くひまわりなど、日常に潜む美しい瞬間が切り取られ残像として覚えています。
日本国民にそんなイメージを強めさせる要因のひとつとして上げられるのが、夏アニメ。細田守監督の『時をかける少女』も、ジブリ作品『耳をすませば』や『コクリコ坂』も夏が舞台だったりします。

“夏の日出来事”を描いた多くの作品がある中で、新海誠監督もまた夏に青春と懐古感を結びつける監督の一人。夏に空を見上げると思わず“新海誠っぽい空”を見つけることもあるほど、幻想と写実の狭間を描いた世界観に心を動かされます。ここでは7月19日(金)より公開の『天気の子』に先駆けて、公開日までカウントダウン形式で作品をプレイバック。本人のTwitterによると、7月7日に作業が終了したばかりの出来立てほやほやの最新作を楽しむにあたり、どの作品にも共通するテーマであるキーワード「距離」にも注目を。

01.『ほしのこえ』 / 2002年公開

新海誠のSFロボットアニメ

聖地:XXXXX
2002年2月に「下北沢トリウッド」で公開された、脚本、作画、演出、美術、編集、声優と7つの役割をこなした新海誠監督のデビュー作であり、究極の自主制作アニメ。未だに同作が一番好きだというファンもいるほど。舞台は、西暦2046年と少し先の未来。宇宙戦争で遠くへ離されてしまった中学生の少女と少年との心の交流を描いたストーリー。前作の『君の名は。』と同様に、劇中では空間と時間の両方において2人の「距離」がどんどん離れていく設定。互いの存在が遠くなっていく中、2人は互いを想い続けることができるのかという、今後の新海誠作品の根底に流れるテーマ「想い人との距離」が凝縮されているのが特徴です。

 

02.『雲のむこう、約束の場所』 / 2004年公開

中二病っていいなと思える青春映画

聖地:北海道や青森!?
宮崎駿監督の『ハウルの動く城』がオンエアされたのとほぼ同じタイミングで公開された新海誠監督の2作目であり、初の長編映画作品。津軽海峡をはさんで南北に分断占領された戦後の日本を舞台に、中学生のひろきとたくや、さゆりをメインに物語が繰り広げられます。もちろん、ひろきとたくやはさゆりのことを想っているという、恋愛模様もあり。物語はそんな想い人であるさゆりを救出するために、SFチックな展開でハッピーエンドに向かって進んでいきます。設定が少々難しく、SFらしく現実離れしている展開もありますが、この映画では我々が求めている“THE 青春”を思うままに堪能できるのが魅力。部活の後輩からの告白や好きな人との登下校、放課後の音楽室のムードなど、見ているだけで懐かしさを感じます。『君の名は。』のカタワレ時の再開場面を思い起こさせる、ロマンチックなシーンも見所です。

03.『秒速5センチメートル』 / 2007年公開

貴樹の気持ちとシンクロ。女性より男性に評判がいい理由は?

聖地:東京参宮橋駅付近、栃木県岩舟町、鹿児島種子島
単館上映でありながら半年に及ぶロングランを記録した新海誠監督の3作目。お互いに運命の人だとは実感しつつも、中学校進学をきっかけに離ればなれになった男女を軸にストーリーが展開されていくよくある恋愛ストーリーですが、その評価を見てみると劇中の心のポエムや喪失感が、女性ではなく多くの男性の心を捉えているよう。そんな極端な意見の分かれ方からか、“過去を美化”しがちな男性と“今が一番大切”な女性の恋愛観の違いを象徴する作品とも言われており、価値観によって感情移入の仕方が変わってきます。恋愛観には共感できなかったという人でも、多かれ少なかれ忘れられない存在や取り戻せないものが存在するなら、ストーリーに入り込めるかもしれません。

04.『星を追う子ども』 / 2011年公開

孤独を感じている人に見てほしい。死を乗り越える物語


聖地:長野県佐久市、小海町
『雲のむこう、約束の場所』、『秒速5センチメートル』 とSFチックな2作品が続いてきた中で、作風が一新されたのが同作。淡い想いをよせていた少年を失ってしまった少女アスナと、亡き妻を10年間想い続けてきた男モリサキが、死者の復活のために伝説の地下世界アガルタに旅に出るファンタジー。これまでとイラストのテイストもガラリと変わり、建築や背景美術はおろか、ロボット兵まで登場し、ジブリへのオマージュと言われることも多い作品ですが、大きく変化したのは物語の構成にありました。長編映画というカテゴリで公開された、『雲のむこう、約束の場所』や『秒速5センチメートル』はよく見ると場面転換が激しく、まるで個々の短編作品を繋ぎ合わせているかのよう。一方で、『星を追う子ども』はそんな新海監督特有のストーリー構成が無視され、1つの長編作品として完結しているのです。そんな変化に気を付けてみて見るのも新海監督作品ならではの醍醐味。

05.『言の葉の庭』 / 2013年公開

続いていく人生の中で、少し雨宿りをしたくなったら

聖地:東京都新宿(新宿御苑)、渋谷

その映像を見ただけでも雨音が聞こえてきそうな、儚げなアニメーション。そんな映像美を効果的に使って描かれているのが、「雨の日は地下鉄に乗れない病」という、学校に行けない冷めた高校生と、教師であることを隠して彼に近づくミステリアスな女性の孤悲の物語、『言の葉の庭』です。2人が交流するのは雨の日の午後だけという設定ゆえ、その関係性を象徴するビジュアルとしての雨のシーンが多いのが特徴。この雨は一時的な避難である“雨宿り”という意味に加えて、人生の雨宿りというダブルミーニングで、2人の感情の強弱によって雨の強さも変化していくのも見ものです。そしてラストは、これまでの新海誠作品では珍しい未来の希望を予想させる結末というのも大きなポイント。教師の女性は、次作『君の名は。』にも登場しており、そちらでその後を見ることができるのも感慨深いです。