シリーズ「定番再考。」Vol.04
35周年でリニューアルしたPORTER タンカー シリーズ
知れば知るほど驚異的。「タンカー」はハンドメイドの結晶だった。
目にする機会も多いせいか、どこか「タンカー」はシステマシックに、機械的に量産されているようなイメージを持っている方も多いかもしれません。しかしその製法は1983年からほとんど変わっておらず、現在でも愚直なまでにオール・ハンドメイド・イン・ジャパン。よくよく見ると実はステッチの数もかなり多く、手間暇かけて作られていることに気づきます。
これだけのヒットアイテムなのに類似品がないのも、中綿入りのふわふわとした重ね生地を精密に縫い上げるのに非常に高い技術と熟練が必要だったり、むしろ真似することが難しいからという側面もあるようです。
吉田カバン本社内の工房で、サンプルの生産特殊な修理、特殊な仕様のパーツなどを生産しているカバン職人は現在3名。すべての職人は吉田カバンのバッグ生産をお願いしている協力工場に数年間“出向”して、技術を身につけてから戻って来た若い世代の職人です。
中でも特に「タンカー」の縫製は特殊で難しく、ある程度熟練したとしても、仮に一人で「3WAY ブリーフケース」を縫い上げるには1日に1〜2個が限界ということです。もちろん国内の複数の専門工場では、熟練の職人が分業しているため生産効率はもっと上がりますが、これだけの普及量にして、そうしたハンドメイドが繰り返されているというのは、ある意味で驚き。
現在「タンカー」を手がけている専門工場は、国内で10社ほど。それでも「吉田カバン」のブランドのもと、クオリティのブレなく均一した状態でバッグが仕上がって来るのは、厳しい生産基準と、幾重にも及ぶ検品のシステムが機能しているから。
量産品ではあるものの、複雑なハンドメイドのプロダクトがこれだけ高品質で維持されているのは他にあまり例がないかもしれません。ちなみにもちろん吉田カバンでは、その全てを把握していて、例えばお客様から修理の依頼が入った時には、それを生産した工場に修理の依頼が行くようにシステム化されているというからさらに驚きです。
今回発表から35周年を迎えた「タンカー」は、この2019年1月のリニューアルでアップデートをしています。それが冒頭とは重複しますが以下になります。
・ジッパーの引き手をオリジナルのプレス抜き仕様に
・内装部分の随所を現代の仕様にアップデート
・すべてのモデルにオリジナルの巾着が付属
これらはより「タンカー」の原点に近づきながら、より愛着の持てるようにアップデートされた部分とも言い換えられますが、中でもこだわったのが「セージグリーン」を発売当初の色に再現アップデートするという点だそうです。
実は「タンカー」を代表するこの「セージグリーン」は、35年という時間の中で微妙に色が変化してきたのだそうです。それは染めのロットの小さなズレの集積が、少しずつ当初の色と変わってきたというのは、染色と調整の難しさを物語っており、そこまでも人の目による検品であることの証明でもあります。
ロングセラー商品ならではの回避の難しい問題もありますが、今回の35周年のタイミングで本来の色に。見比べてみないと分からないですが、全体的にミリタリー感が増した印象です。こうした点まで含めて、繊細に、大胆に検証されたのが今回の35周年のリニューアルなのです。
ロングセラーの座に甘んじることなく、本来の“らしさ”にこだわりながらアップデートを果たした[ポーター]の「タンカー」シリーズ。2019年1月24日からリニューアルしたシリーズが店頭に並ぶということなので、これまでのファンはもちろん、今まで「定番過ぎて」と敬遠していた人も、改めてその魅力に触れてみてはいかがでしょう。「タンカー」はまさに日本が生んだ「エバーメイド」な逸品です。
cooperation YOSHIDA &CO.,LTD
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