迎春 —EVERMADEスタッフの裏ベストは?
2018年の「デイリースタンダード」を振り返る—
週6アイテムをお届けしている「デイリースタンダード」。EVERMADEスタッフ8名が、昨年の約300アイテムの中からマイベストを選定し、その良さを縦横無尽に語り合いました。
2018年6月のローンチから約半年間にわたり馴染み深い定番品や、未来の新定番となるであろうプロダクトにフォーカスし、1日1品を皆さんに紹介してきた「デイリースタンダード」のラインナップも気付けば約300アイテムに到達。
その選定においては、膨大なリサーチと鋭い審美眼でスタイリストたちが吟味したものを、さらに編集部でふるいをかけて厳選紹介してきました。文中には表れてはいないものの、そこには日々のテキストだけではお届け出来ない、裏話やスタッフたちの思い入れも。
『エバーメイド』の新年一発目となる特集では、そんな現場の温度感も感じていただくべく、編集長の武井幸久と編集の本郷誠と羽賀まり奈、プロダクト集めに奔走する4名のスタイリスト・森田晃嘉、井田信之、井田正明、稲垣友斗、そして「デイリースタンダード」の撮影を担当するカメラマン・清水健吾の計8名が集結し、座談会を開催。これまでに紹介してきたアイテムの中からスタッフによる“自分的ベストな2品”を選び、全員で存分に語り合いました。
今回は、ある意味で“オタク”とも言えるスタッフたちのプロダクト愛と、それぞれのリアルな体験談をお送りします。
武井幸久…EVERMADE編集長。変わったモノ好きの面白がりの割に、自ら買うものはチープコンサバ。 本郷誠…ライター。膨大な知識量で買うものにもこだわるが、着ているとなぜか高そうなものに見えない。 羽賀まり奈…EVERMADE編集。20代後半女子の割に、40代前半男子くらいの感性を持つ。 清水健吾…カメラマン。プロダクト撮影に長け、自らも鋭い審美眼を持つ。アシスタントの不在を嘆く日々。 森田晃嘉…スタイリスト。スタンダードを知りながら、持ってくるモノはどこかヘンなものが多い。 稲垣友斗…スタイリスト。森田晃嘉を師に独立。師匠よりは洗練されたものを狙って持って来がち。 井田信之…スタイリスト。同業の井田正明とツインズの兄。弟と見分けがつかない。 井田正明…スタイリスト。同業の井田信之とツインズの弟。兄と見分けがつかない。
1.「スタイリストの人はみんな持っているんじゃないんでしょうか(笑)」
[f’lint(フリント)]の粘着クリーナー / 推薦者:スタイリスト 森田晃嘉
ST森田:これは実際に撮影現場でも使っているもので、ポケットに入るほど小さいこのサイズ感に助けられています。ストアなどで良く見るタイプのものでも良いんですが、サイズが大きすぎて扱いにくいんですよね。
本郷:これは、スタイリストだけじゃなく日常使いとしても良いものなの?
ST森田:そうですね。小さいけど、実際使用する際は伸びて大きくなるので使い勝手も良いんです。
ST井田(信):僕も持っています。現場で使っていると、「何それ?」って言われること多いですよね。
ST森田:もともとアメリカに行った時に見つけて買ってきたんですが、日本でも「東急ハンズ」とかで買えるようになって嬉しい。このサイズ感なら旅行とかにも便利ですね。
[フリント]の記事はこちらから。
2.「服を愛でるために、アイロンがけは必要な家事?」
[DBK(ディービーケー)]のドライアイロン / 推薦者:スタイリスト 稲垣友斗
ST稲垣:これはまだ購入出来てなくて、今、狙っているものなんですが、アイロンと言えば[T-fal(ティファール)]とか、[TWINBIRD(ツインバード)]とか、メジャーな良いメーカーのものはもちろん値段も高いけど、スチームの質とかも良いじゃないですか。一方でこの[ディービーケー]は、スチーム機能も付いてなくて、ただ本当にドライアイロンなんです。でも逆にそのシンプルで潔いところがすごく良い。霧吹きを吹きかけながらアイロン掛けするという、すごくオーセンティックな感じが。
武井:普通の人はアイロンよりもきっとクリーニングが多いよね。だから自分でアイロンしている人は稲垣くんみたいなスタイリストとか、ある意味で趣味人かも。だって今はシャツ1枚150円くらいでクリーニング出来ちゃうでしょ。
ST井田(信):でも、高い良い生地のものをクリーニングに出すと、綺麗にはなるんですが、だんだん生地がユルくなっちゃうんですよね。
本郷:確かに自分でアイロン掛けをすると、服を愛でている感じがする。より愛着が増すんだよね。
ST稲垣:確かに手間なんですが、その手間が結構好きなんですよね。
ST井田(信):でもきっとそれ、僕らくらいしかやらないんですよ(笑)。
ST稲垣:今は簡単な服用スチーマーとかも出ているので、わざわざアイロン台を出してやるっていう人はあまりいないかもしれないですけど、逆に服好きな人だったらアイロン掛けが嫌いな人はいない気がします。
ST井田(信):あっ、わかる! アイロンかけた時にシャツの質が分かりますよね!
本郷:オタクだと思う、そういう人は(笑)。
[ディービーケー]の記事はこちらから。
3.「初めて見た時の衝撃が凄かった」
[Ten c(テンシー)]のアノラック / 推薦者:スタイリスト 井田信之
ST井田(信): 僕は今回「マイベスト」を選ぶにあたって念頭に置いたことに、“これから新定番になっていくもの”というのがありまして。[テンシー]は実際、値段も高いし、買う人も限られてくるアイテムだと思うんですが、初めて見て触った時に「こんな素材あったのか!」ってめちゃくちゃ驚きました。しかも構想期間2年、製作に3年もかかったという壮大な背景もすごいなと。[C.P.COMPANY(C.P.カンパニー)]と[STONE ISLAND(ストーンアイランド)]の人たちが作っているんでミリタリー的な要素も強いですし、機能性にも富んでいる。あとブランドのコンセプトにある「一生着られる服を作る」っていうのも、新定番になる一つの条件かなと思いました。
本郷:新しいブランドで長く着られるかってまだ判断が難しいかもだけど、新興のブランドにもかかわらず、長いこと着られる可能性を高く秘めたブランドな気がする。トレンディさがある一方で、形は変にシェイプアップされている訳でもないし、あんまりガボっとしている訳でもないし。
ST森田:高いけど、費用対効果は絶対ある服だよね。
羽賀:これが日本に来てまだ2年ぐらいなので、10年着たらどのくらいの生地感になるか気になりますね。
ST井田(信):着ている人がいたとしてもまだ1、2年ですからね。本体が14万円とかで、ライナーが5万円とかするんで20万円コースなんですけど、ただライダースジャケットと同じ感覚で買うんだったらありなのかなって思います。
本郷:そうそう、それでワンシーズンで終わるようなものに10万も20万円もっていうよりかは、この先10年は確実に着られるもので、それが14、5万円だったら1年に換算すると1.5万円と。お得かもしれない……。
武井 : まあそう言いながら、いったい何着一生ものを買ったか分からないけどね。
[テンシー]の記事はこちらから。
4. 「派生ブランドが初期の製法を忠実に受け継いでいるのが面白いなって」
[BAGGY(バギー)]のBDシャツ / 推薦者:スタイリスト 井田正明
ST井田(正):ボタンダウンシャツの本家[Brooks Brothers(ブルックス ブラザーズ)]では、生地を変えたりディテールのマイナーチェンジを繰り返しながらオリジナルをアップデイトしているみたいなのですが、[ブルックス ブラザーズ]にいた人が始めた派生ブランドの[バギー]はその逆で、オリジナルの型を忠実に再現し、当時と同じ工場で作っているんです。本家が長い歴史の中で変化しているにも関わらず、そのオリジンにこだわってやっている感じが良いなって。
武井:井田くん本人もこのシャツ持っているんだっけ?
ST井田(正):持っていますし、ブルックスのも持っています。どちらも好きなんですが、ブルックスの方が少しドレス寄り、[バギー]のはカジュアルでアイロンかけなくてもいいくらいの雰囲気と言いますか。あとサイズも若干ゆったりしていますね。色も12種類くらいあるし、メイドイン・USAで作られているし、そういうところもずっと変わらないみたいな。
本郷:ブルックスはブルックスで、今も色々と作り上げているから、そっちも成長ではあるけども。でも2000年代に入ってからそんなに主流じゃないのに、なんで正明はあえてオックスフォードなの?
ST井田(正):ちょっとルーズなシルエットが丁度良いといいますか。あと洗いざらしでいけたり。
[バギー]の記事はこちらから。
5.「“ニコイチ”なのがズボラ派にぴったり」
[ZEBRA(ゼブラ)]の新型マッキー / 推薦者:編集 羽賀まり奈
羽賀:1本で“両得”みたいな発想が、自分の面倒くさがり屋な性分に合っているんです。というのも、普段いざ必要なときにわざわざハサミを取りに行くのが面倒なんで、玄関やトイレ、枕元などにハサミを置いています。玄関のハサミは宅急便の開封時に使うのですが、その時にはこの「マッキー」の方が良いじゃんってなりました。ただ、もっと言うなら伝票の住所はボールペンで書くので、「マッキー」じゃなくてボールペンでお願いしたくて。なので今回は今後の要望も込めて選びました。
本郷:確かにこれは佐川急便用だよね。特にマジックで箱にでっかい字を書くような業者さんは便利だよね。だから一般の人には向いていないのかも。
ST森田:もしボールペンがあれば、そのままペン先を差してテープを切っちゃうよね。
羽賀:それをやるとインクが出なくなるんですよ。
ST井田(信):経験済みなんですね(笑)。
[ゼブラ]の記事はこちらから。
6.「これを使ってない人は『何で使ってないの』って思っちゃうぐらい便利」
[Allocacoc(アロカコ)]の「パワーキューブ」/ 推薦者:フォトグラファー 清水健吾
P清水:今回俺が選んだモノは、“自分が一回使って以来、その代わりがない”という条件のものなんですが、「パワーキューブ」に関しては、代わりがないというか、これ以上に効率よくコンセントをさせるものが存在しないんだよね。通常の横に長いタイプは隣同士が邪魔し合ってソケットに差し込めないものもありますが、キューブタイプなのでその問題が解決されます。事務所と家のコンセントはすべてこれしか使っていません。
本郷:「MacBook」とかもアダプタがデカくなってきたから、横長のやつだと互いに侵食し合って1個跳ばしで付けないといけないもんなー。
P清水:そうそう。あとは「全部差し込んでいる気持ち良さ」ってやっぱあるんだよね。この行為が気持ち良いといいますか(笑)。ちなみにこれがまるまる入る四角い箱も売っているので、コンセントでゴチャっとしていても、それをかぶせれば隠せるみたいなことも出来ます。
[アロカコ]の記事はこちらから。
7.「撮影で試着して、すぐ買いに行った1本」
[Cellar Door(セラー ドアー)]のスラックス / 推薦者:編集 本郷誠
本郷:これは撮影の時に、実際に試着させてもらったら良くて、アローズに買いに行ったんですよ。[PT01(ビューティーゼロウーノ)]や[INCOTEX(インコテックス)]とか、イタリアのスラックスって結構多いんだけど、これはスポーティーだったりカジュアル過ぎなくて、ウエストがゴムだからジャージみたいに穿ける。で、パンツインしてウエストのゴムが見えたとしても上品だから、貧乏臭くならないというか。
武井:このセンタープレスって、だんだん取れたりしないの?
本郷:それが全然大丈夫なんです。まぁ、そこは俺が常にクリーニング出しているからっていうのもあるかもだけど。
ST森田:本郷さんのクリーニング頻度は半端ないんですよ。自分で洗わない人だからな(笑)。
本郷:でもさ、トロピカルクロス(夏用のウール生地)なんて、家でも洗えるの?
ST井田(信):僕は手洗いでドライクリーニングの液体とか使って洗っちゃいますね。
本郷:別に家で洗っても問題ないんだ。
ST井田(信):ただアイロンが結構大変です。細かいところまでシワが入っちゃうので、それが手間だなと。
ST井田(正):こいつ(兄)はめちゃくちゃ洗濯こだわるんですよ!
本郷:その手間が嫌だからクリーニングを選ぶ訳なんだけど、これは雑な穿き方をしても上品さはずっとキープされてるんだよな。あと、いわゆるスラックスメーカーのものよりも、ちょっと太いのもポイント。
ST井田(正):太いせいか、シャレ感がありますよね。
本郷:全然違う。太くてテーパードかかっていて、それが年齢を選ばないのが良い。元々こんな太いの?このブランドは。
ST井田(正):太いのもありますけど、最近はセレクトショップの別注になっている印象ですね。型数も実際もっとあるのかもしれませんが、どこのセレクトのプレスルームにも大体この型が置いてあるんです。だからこれが定番なのかなって。
本郷: スラックスなのにウエストゴムって、ここ何年かキテるじゃないですか。
ST井田(正):「PITTI UOMO(ピッティ ウオモ)」とかでもここ2年ぐらいずっとそうですね。
武井: そこまで言われると、これの値段が知りたくなる。
本郷:1万9千円ぐらいで、それも丁度良い。これが3万円ぐらいになるとまた違うじゃないですか。でもこうしてスタイリストにピックアップされたものが、自分も着たくなるとか使いたくなるっていいですよね。そこで更に記事の説得力が増す気がする。
[セラー ドアー]の記事はこちらから。
8.「これを買うために、輪ゴムの使い方を模索中」
[O’Band(オーバンド)]の「カモフラ缶」/ 推薦者: 編集長 武井幸久
武井:オレの今回の基準は「2019年に買うシリーズ」。
ST森田:[オーバンド]は安いんだから、今買ってくださいよ! 今日の帰りにでも。
武井:いや、欲しいものではあるけど、今は特に必要ないんだよね。輪ゴムを使わなくちゃいけないシーンって最近なくない? この3年、輪ゴム使ったことある?
本郷:俺は名刺を整理する時に、輪ゴムで留めて引き出しに入れていたりするかな。
羽賀:スタイリストさんとかは使いそうですけどね。
ST井田(信):タグまとめる時とか使います。
ST森田:引っ掛けるために使う。
本郷:あと俺は薬を結構飲むから、薬をゴムで束ねる。
武井:本郷くんはカラダ弱いからな。いや、これはパッケージも良いし、部屋に置きたいから、むしろ「使う用途を探したい」と思って。無駄なものは増やしたくないんだけど。
ST森田:そういや俺もこの間「ロフト」行った時にこの[オーバンド]見つけて、買おうかなって思ったけど「やっぱ使うことないからな」って買わなかった。
武井:でもこのデザインとかサイズもイカしてるよね。昔のデザインを活かしているのもいい。この間、この会社の社長がマツコの番組に出ていて、若い社員にアイデア出させてこういうのできたみたいなことを言っていて。そういうストーリーも好きだから。
ST稲垣:これを「パシフィックファニチャー」とかで見つけたら、無駄に買っちゃうかも。
本郷:分かる。使うかは別として買っちゃいそう。
武井:よし、今年はこれを買う。
本郷:いや、今日中に買いましょうよ(笑)。
[オーバンド]の記事はこちらから。